「広報津」平成23年5月1日/第129号(音声読み上げ) 歴史散歩(60)

登録日:2016年2月25日

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歴史散歩(60)

津市無形民俗文化財 下井生[しもいう] 導浄さん

 津市いちし町のしもいう地区では「導浄さん」と呼ばれる珍しい行事があります。
 「導浄さん」とは、地区の全戸(26世帯)を対象に1年交代で各家を巡る仏像(木造阿弥陀如来立像)の呼び名のことで、その仏像を預かった家やその家の世帯主、さらには行事自体も地区の人から「導浄さん」と呼ばれています。
 毎年12月末と1月の第2土曜日の夜に「導浄さん」を預かる家で「家移り念仏」が行われ、翌日に「導浄さん」を預かる家が交代します。
 「導浄さん」が「家移り」をする際は、りんを持つ人を先頭に、燭台・香炉・花・仏像・掛け軸などの順に用具を持って一列に並び、交代先となる家へと移動します。
 「家移り」の夜は会食が行われ、この時の世話役はこれまで1年間「導浄さん」を預かっていた家の人となります。
 「導浄さん」には2つの特徴があり、まず1点目は浄土真宗と天台真盛宗それぞれの宗派に関係なく、各家を順番に「導浄さん」が巡るということ、2点目は地区内で葬式があった際、「導浄さん」を預かった家の人が高い位の僧侶として葬儀に参列すると共に、その家も「お寺」としてお参りを受けます。
 この他、元旦には地区の皆さんが「導浄さん」を預かる家へ初参りをするほか、各家の年忌や嫁入りなどがあった場合もお参りをします。
 この行事の起源については不明ですが、織田信長が伊勢を侵攻した際、兵火を受ける前に地区の皆さんが仏像などをひそかに運び出したと伝えられています。
 保管される用具類のうち、野袈裟は天保6年(1835年)に旧いう村にあった真宗高田派[しんしゅうたかだは]用に製作されたものであり、この時には「導浄さん」の仏像と野袈裟、さらに阿弥陀如来の掛け軸が一式として存在していたと推測されます。
 本年3月30日、「しもいう 導浄さん」は、新しく市の無形民俗文化財に指定されました。これは、仏像だけでなく、これに伴う用具一式が家々を移動していくことや、僧侶でない者が葬儀に深く関わるなど、しもいう地区に残された珍しい風習全体が高く評価されたものです。


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