「広報津」平成24年2月16日/第148号(音声読み上げ) シリーズ 津のひと・もの(17)

登録日:2016年2月25日

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裏表紙

シリーズ 津のひと・もの(17)

孤高の頂をめざして

 住宅地の一角。住宅に併設されたレスリング教室の空気は、生徒たちの熱気で張り詰めていた。いちし町にある教室には、3歳から高校1年生までの10人の生徒が通う。久居西中学校1年生の奥野春菜さんもその1人だ。
 レスリングの元国体選手で、教室の監督を務める父竜司さんの下、姉の里菜さんが練習に励む姿を見て育った。そんな家庭環境と旺盛な好奇心からか、3歳になったころ「一緒にやりたい」と自分から言い出した。
 フォールで勝つには相手の両肩を1秒以上マットに付けることが必要で、相手をマットに倒さなければならない。だから、選手は体力づくりと相手の足を取りにいくタックルの練習に多くの時間を費やす。
 3歳年上で久居高校1年生の姉里菜さんは、これまでに全国大会で10回優勝し、昨年のカデット世界大会で銅メダルを獲得するほどの実力者である。姉の活躍に大いに刺激を受けた春菜さんも、持ち前の負けず嫌いから食らいつくように練習に励み、めきめきと力をつけた。体が大きくなるにつれ大会でも頭角を現し、全国大会で10回の優勝を果たすなど、国内屈指の実力を身に付けた。
 「得意技はタックルです。毎日が練習で休みはありません。でも、レスリングが好きだから頑張れます」
 春菜さんが見上げる視線の先は、壁に掲げられた無数の金メダルだ。ここで生まれ育ち、いまや世界で活躍する吉田沙保里選手が獲得したメダルの数々である。生徒たちを見守り、無言のメッセージを送っている。
 「小さいころ一緒に練習してくれた吉田選手の活躍は私たちの大きな目標です。この教室ではみんなそう。私もオリンピックの舞台で活躍して、周りから頼られる選手になりたいです」
 そう言い切る春菜さんの瞳は、きらきらと輝いていた。
 スポーツにけがはつきものだ。春菜さんも、昨年、首にけがをして試合に出られなかったことがある。当たり前にやってきたレスリングができない悔しさを初めて経験し、辛い時期を過ごした。そんな時、リハビリを手伝ってくれたのは姉の里菜さんだった。
 「焦らずに、しっかり治そう」
 姉の言葉で、逆にけがをせずに続けることの大切さを学んだ。何でも分かりあえる身近な存在のおかげで、立ち直ることができた。
 日もとっぷりと暮れた19時。いつもの教室には、すでに練習着に着替えて汗を流す春菜さんと、同じ志の下で集まった仲間たちの声が響いていた。
 彼女たちが目標とする津市が生んだ偉大な英雄たち。孤高の頂を守るその姿は次の、また次の世代に大きなエネルギーをもたらしているに違いない。そして、エネルギーを受け継いだ若者たちが、やがて世界の大舞台を席巻する日は、もうすぐだ。

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