あけぼの 平成23年10月16日発行(音声読み上げ) シリーズ 人・ひと

登録日:2016年2月25日

4ページ目

シリーズ 人・ひと

中村博俊さん(ブラジル学校アポーヨミエ代表)

 今回は、市内にあるブラジル学校「アポーヨミエ」の代表をしている中村さんが、「ほっとけない」と感じている子どもたちの直面している現実を、分かりやすく具体的に語っていただきました。

○「アポーヨミエ」について教えてください。
 うちには、小学1年生から5年生まで70人ほどの子どもたちが通っています。半数は朝から来ている子で、残り半数は日本の学校に通いながら、放課後うちに来ます。朝から来ている子は、ポルトガル語でブラジルの小学校と同じ勉強と日本語の勉強をしています。放課後に通ってくる子たちは、ここでポルトガル語の勉強をしています。

○この子たちのお父さんやお母さんたちの中には、すでに、家を購入したり、永住者資格を持っている人も多いですよね。
 人によって違うとは思いますが、たとえ家を買っていても、「いつか帰る」と思っている人は多いと思います。だから、保護者によっては、「日本の学校に行かせてもそれほど意味はない。いつか国に帰るんだから」と考える人もいます。親の仕事の都合で転学を繰り返すために、学力が定着しなくても「国へ帰るのだからそれほど関係ない。何とかなる」と考えている人もいます。でも、国へ帰ると言っていてもなかなか帰れずに何年も日本で暮らしている人も多いのが現実です。現在、25万人ほどのブラジル人が日本で暮らしていますが、そのうちの20万人はこのまま日本で定住化していくんじゃないでしょうか。

○それは、なぜですか?
 日本の方が、安心で暮らしやすいということと、日本の生活に慣れてしまうとブラジルに帰った時にギャップが大きすぎて、また日本に戻ってくることになるんです。

○もしブラジルに帰ったとしても、日本で生まれた子どもたちにとっては大変ですね。
 ブラジルでは、ここ数年のうちに学歴社会化がどんどん進んでいます。小学校・中学校の授業自体は日本よりずっと短いですが、何の技術や知識もない子が安定した職業に就くことは難しいので、ブラジルでは子どもたちが朝から晩まで必死になって勉強しています。日本にいる子どもたちの親は、10年以上も前に日本に来ていて、そういう母国の変化や現実が分かっていない人が多いように思います。「どうにかなる」というのは、10年前の話です。

○日本語が十分でないために、日本では高校への進学が難しい子もたくさんいます。
 そうですね。それと同様に、ブラジルに帰っても、ポルトガル語で教育を受けていない子が、ブラジルの高校や大学に進学して夢を実現していくのは、とても難しいと思います。日本語が話せれば日本語の授業が理解できるかというとそうではないのと同様、多少ポルトガル語が話せてもブラジルでの授業についていけるかというと難しいと思います。

○今、日本で暮らす外国につながる子どもたちに必要なことは?
 この子たちが、将来、どこで生きていくにしても、生きるために必要な力は、今、その子の通っている学校で責任を持って付けてあげてほしいと思います。親は「母国へ帰るから」と言っていても、現実に日本で生きていかなければならない子は大勢います。また、たとえブラジルに帰っても、決してその子にとって日本より楽な現実が待っているわけではありません。だから、そうした現実を受け止め、今、目の前の子どもたちに付けなければならない力、日本でも高校や大学に進学していくために必要な力を付けてあげてほしい。そして、子どもたちが目標を実現していくためには相当努力しなければならないことも子にも親にも伝えてあげてほしい。「外国の子だから、この程度できれば…」では、駄目なんです。日本の子以上に厳しい現実があることを親や先生たち周りの大人が理解して、厳しく愛情を持って、子どもを指導していってほしいと思います。

ありがとうございました。



記事の先頭へ 目次へ


2ページ目から3ページ目へ  

このページに対するアンケートにお答えください

このページは見つけやすかったですか?
このページの内容はわかりやすかったですか?
このページの内容は参考になりましたか?

このページに関するお問い合わせ先

政策財務部 広報課
電話番号:059-229-3111
ファクス:059-229-3339