「広報津」第254号(音声読み上げ)津市人権教育広報あけぼの 第21号

登録日:2016年7月16日

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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第21号

平成28年7月16日発行
教委人権教育課  電話番号229-3253 ファクス229-3332

子どもたちの未来を保障するために 今、私たちにできること

子どもたちには、みんな、いろいろな夢があり、希望があり、可能性があります。夢を実現していくために、それぞれに努力し、その中で人として成長し、自分の未来を形にしていきます。

でも、そんな子どもたちの努力や頑張りとは別に、生まれ育った家庭の経済的な事情などによって、子どもたちの未来が左右されてしまう場合も少なくありません。平成25年国民生活基礎調査(厚生労働省)によれば、日本の「子どもの貧困率」は16.3%で、6人に1人は貧困状態にあるといわれます。

家庭の経済的な事情によって、子どもが自分の未来を諦めたり、目標を見失ったり、可能性が摘み取られかねない現実を前に、「他人の家庭のことだから」では、終わらせたくありません。

今、市内のいろいろな場所で、子どもたちを地域ぐるみで支援していこうとさまざまな活動が起こっています。下を向いて「どうせ」とつぶやいていた子どもたちが、地域の中でいろいろな人に囲まれながら笑顔に変わっていく。自分のことを大切に思ってくれて、声を掛けてくれる人の存在や地域の中の温かな人のつながりを意識したときに、子どもたちの笑顔はどんどん輝きを増していきます。

今回の特集「子どもの未来 応援します!」は、今、この私たちの市で、子どもたちの未来を守りたいという思いを胸に活動している人たちの姿から、私たち一人一人が、それぞれの場所でできることを一緒に考えてみたいと思います。

人権コラム 地域の中の新しい家族

近年、地域におけるコミュニティーの希薄化が社会問題となっています。

この希薄化の要因の一つに小家族化があります。平成26年度の厚生労働省の調査では、核家族世帯と単独世帯を合わせると86.3%を占め、今後も増える傾向にあります。この小家族化傾向に加え、パソコンや携帯電話の長時間利用により、家族間でお互いの関心が一層失われ、自己中心的な考えや行動が助長され、さらには、人権問題についても他人事という考え方を助長しているという指摘もあります。

私たちは日々の暮らしの中で、子どものいじめ、女性差別、高齢者の虐待、貧困の問題など、さまざまな人権問題と関わりあっています。このような社会の中で、私たち一人一人が大切にされていることが実感でき、住みやすいと思える社会を作るために、日頃から、さまざまな人権問題について、決して他人事ではなく、自分のこととして関心を持ち、学ぶ姿勢が大切だと思います。

私たち人間は大脳生理学上、人とのつながりや関わりの中で、力が出てくる動物だそうです。自分の中にある力が発揮されて、元気に幸せに生きている状態を「エンパワーメント」といいますが、この「エンパワーメント」を維持していくために、私たちは何をしていけばよいのでしょうか。

その手だての一つとして、地域の中で、人とのつながりや関わりが持てるような場所に自分の身を置いてみてはいかがでしょうか。例えば、一緒に誘い合って地域イベントやボランティアに参加する、地域の子どもと関わるなどです。

そこには、「新しい家族」といえるようなコミュニティーが生まれるのではないでしょうか。

お互いを思いやったり、支えあったりできる、そんな人と人とのつながりがある地域社会を作っていきませんか。

子どもの未来応援します

子どもたちがそれぞれの夢と希望をもって成長していける社会の実現を目指していくために、子どもが安心して活動・学習できる環境づくりに取り組む団体の皆さんにお話を伺いました。活動の内容やその様子、そこに関わる人々の声などを紹介します。

NPO法人 世界SHIENこども学校のびすく
未来ある子どもたちのために、環境づくりをしています

津市内で活動を展開している「NPO法人世界SHIEN子ども学校のびすく」。家庭や地域の子育てを支える環境が大きく変わり、自分の居場所をなかなか見つけられない子どもたちが増えてきている分、「のびすく」では放課後や長期休暇の時間を使って、学校でも家でもできないような体験学習を行っています。たくさんの人と関われる環境の中で、子どもたちが主体者となって活動することで、人に認められる経験や人とつながる経験が「安心して活動ができる居場所づくり」につながっているのです。

この活動を立ち上げた代表の松井強さんは、以前、少年野球の監督をしていたそうです。その時に、「本当にこの子たちは楽しめているのだろうか。ただ大人が与えている場で活動をしているだけではないか。」と感じ、「子どもたちの居場所を大人が一方的に支援し与えるのではなく、子どもたちが主体的に自分たちで考えて行動できるように、学校でも家でもできないような体験の場づくりが地域の力でできるのでは」と考えたのが、活動のきっかけだったそうです。

「のびすく」では、子どもたちにさまざまな活動の場を提供します。津まつりでは、レインコートを着ながらの「水風船合戦」を遊び体験として企画しました。他にも県の総合文化センターと博物館の間で花の植え替え作業を行うといった活動もしています。そこで、参加していた子どもたちは活動を見ていた人たちから「頑張ってくれてありがとう」と声を掛けられていたそうです。松井さんは、「多くの人から褒め言葉をシャワーのように掛けられることで、活動する子どもたちの達成感や自己肯定感につながったと思います。」と話していました。

また、地域にある児童養護施設「みどり自由学園」のことが、あまり地域の人に知られていないことを課題と感じていた松井さんと、「学園と地域の間の『見えない壁』をなくしたい」と思っていた園長の中野さんの思いが、「のびすく」と「みどり自由学園」共催の活動を生み出します。地域で子育てをしている皆さんに学園の施設を開放し、学園の子どもと地域の子どもが一緒になってクリスマツリー作りやリース作りを行いました。今後は、学園を会場として、広く一般にも参加を募り、「子どもがつくる子ども食堂」の開催も予定しているそうです。「子どもたちが自分でメニューを考え、自分たちで料理し、参加者に食べてもらうという企画です。多くの子どもたち、地域の人たちに参加して欲しいと思っています。」と松井さんは話してくれました。

「のびすく」では、他にも「ママサロン」「ママカフェ」を開催し、子育てしている親の日頃の悩みなどをシェアする活動も行っています。

南郊ナイトスクール みんなの学び場! 地域サポーターによる学習支援の取り組みから

子どもたちの学びの場づくりを通して、子どもたちが達成感を感じたり、子どもたちの自己肯定感を高めたりしたいという地域の思いから始まった「南郊ナイトスクール」。地域の大人たちで作る「南郊中学校区家庭学習支援本部」が中心となり、2014年度末から始まりました。昨年度は毎週2回火曜日と金曜日の夜に、南郊中の1年生から3年生までの生徒約70人が、この学び場で数学と英語を中心に学習しました。

支援本部長の田中久生さんからは「学習サポーターが個別にサポートすることで子どもたちの学力も向上していると思います。また、ナイトスクールにはサポーターとしていろんな大人がいて、いろんな話ができるんです。子どもたちにとっては学習だけでなく、一つの居場所になっていると思います。」と、学力向上以外の効果も聞かせてくれました。田中さんはサポーターに、「授業で勉強を教えるというより、問題を子どもと一緒に考えてあげてください。」と言っているそうで、誰でも気軽にサポーターとして参加してもらえるように心を配っていました。

スタッフの皆さんにも参加した動機など、ナイトスクールについて尋ねてみました。

サポーターの郡山さんは「僕は参加の動機といっても、ただ子どもが好きなだけかな。生徒たちは学習以外の話もしてくれることがあります。あと、僕らが小さい頃に地域のおじちゃん、おばちゃんにいろんなことをしてもらいました。そのことを何かで返したいと思ったんです。」と話し、同じくサポーターの原さんからは「自分の子どももナイトスクールに参加させてもらっていましたが、子どもはナイトスクールでの勉強が大好きでした。いつかこのスクールの生徒が、今度はサポーターとなって帰ってきてくれたらと思っています。」と話していました。

地域の大人たちの熱い思いに支えられている南郊ナイトスクール。学習だけではなく、子どもたちの一つの居場所となっているこの取り組みは、今年度も6月から南郊公民館を会場に始まっています。

核家族化や、地域におけるつながりの希薄化など、家庭や家庭を取り巻く社会状況の変化の中で、子育てを支える環境が大きく変わってきています。子どもたちの置かれる環境によって、可能性や夢に向かって挑戦する力が失われないよう、地域ぐるみで子どもを支えている皆さんを取材することができました。大人から「やってはいけない」と言われるのではなく、「こうしたらどうなるかな」と見守られながら、主体的に活動している子どもたちの姿や、地域の住民や大学生のサポーターと学ぶことで達成感や自己肯定感が生まれる姿が見られました。多くの人との関わりの中で、自分のことを認めてくれる大人が一人でもいれば、そこは子どもにとって安心できる「居場所」となるのかもしれません。

未来ある子どもたちのために、私たち一人一人ができることから始めていけたらと思います。

シリーズ人・ひと

サポーターいっちゅうコーディネーター石川正浩さん

今回は、サポーターいっちゅう(一身田中学校学校支援地域本部)でコーディネーターとして、一身田ナイトスクールなど子どもたちの学びを支援している石川正浩さんにお話を聞きました。

一身田ナイトスクール(学習支援・地域教育力向上支援)の活動について教えてください。

「ナイトスクール」はサポーターいっちゅうの取り組み(学習支援・キャリア教育支援・生徒会活動支援・地域教育力向上支援)の一つです。教員OBを含めた地域住民や三重大学の学生、サポーター登録者・運営委員が学びの場に寄り添うサポーターを務め、生徒の質問に答えたり、プリントの添削をしたりしています。

私が活動を始めようと思ったのは、PTAや子ども会、学校の先生方がとても疲れているように感じ、地域の大人として何か支援できることはないかと思っていたとき、当時の校長先生から学校支援地域本部の起ち上げのオファーをいただいたのがきっかけです。そして、平成20年に「サポーターいっちゅう」を組織し、事業を進める中で連携担当の先生方と協議し「ナイトスクール」の活動が実現しました。

活動をしていてうれしかったことは何ですか?

まちで子どもたちに声を掛けられるようになったことです。自分たちの子ども時代は、地域の人から声を掛けられることがよくあったのですが、最近はそのような関わりが地域の中で少なくなってきたように感じます。学校・地域・家庭の関係が希薄になりつつある中、サポーターいっちゅうの事業で関わってきた子どもたちから声を掛けられると、地域のつながりが感じられ、とてもうれしく思います。

これまで8年間ナイトスクールの活動を続けてこられましたが、大変なことって何ですか?

今一番難しいなと思っていることはサポーターの確保です。子どもたちのニーズは継続的にありますが、それをサポートするサポーターの数が減ってきました。この活動を無理せず、細くとも長く継続していくことが大切だと思っています。

私自身は、いろいろな人と一緒に活動できて、自分も楽しんで行っています。コーディネーターとして、やってあげているではなく、子どもたちと一緒に自分ももう一度学んでいるという思いで活動を続けていきたいと思います。「子育て・子育ち・親育ち」の実践ですね。新しい人にもどんどん参加していただきたいです。

最後に一言お願いします。

学校は地域コミュニティーの中心であり、地域の中の一つの場であると思います。だからこそ、地域で子どもたちを多方面から支え、学校・地域・保護者(家庭)がつながる「地域立の一身田中学校」、まさに開かれた学校づくりを実践していきたいと考えています。親でもない、先生でもない、地域のおっちゃん、おばちゃんが学校の子どもたちや先生方と協働し触れ合っていく中で、地域教育力の向上、ひいては地域力の向上を目指していきたいです。

参加する子どもたちの声から

  • 家ではなかなか集中して学習できませんが、ここでは友達と一緒に集中して学習することができます。
  • わからない所はサポーターの人に気楽に聞くことができます。最後まで丁寧に教えていただいてうれしかったです。
  • 友達やいろんな人とたくさん話ができるところがいいです。

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