「広報津」第257号(音声読み上げ)表紙

登録日:2016年9月1日

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表紙

広報津 平成28年9月1日 第257号

ひまわりの大迷路に挑戦

写真 大阪から訪れた山本夫妻、尼ケ岳をバックに迷路に挑戦(8月5日 スカイランドおおぼらキャンプ場)

第25回市長対談 まちづくりと人づくり

大井町づくり委員会理事長 奥田吉信さん 一志学園高等学校校長 玉村典久さん 津市長 前葉泰幸

平成28年7月13日、旧大井小学校でNPO法人大井町づくり委員会の奥田吉信理事長と、一志学園高等学校の玉村典久校長をお迎えし、学校設立と受け入れる地域の皆さんとの交流について、前葉泰幸市長がお話を伺いました。

大井小学校の閉校に寂しい思い 地域住民で活用方法を模索

市長 この旧大井小学校は明治41年の開校です。105年の長い歴史がありましたが、平成26年3月、その幕を降ろしました。卒業生は、5,048人いますが、奥田さんはその中の1人ということで、小学校OBとして思い出などお話しいただけますか。

奥田 私が在学していたのは、昭和15年4月から昭和21年3月まで、ちょうど太平洋戦争が開戦してから終戦に至るまでを含んだ6年間でした。だから、在学中は戦争一色で過ごしたような気がします。

市長 疎開で通っていた同学年の友達もいたのではないですか。

奥田 入学当時は80人程度でしたが、20人ほどの疎開児童が来て、合わせて100人近い同級生がいました。私たちの学年が一番人数の変動の多い学年で、そんなに児童数が多い学年は他にありません。

市長 1学年で100人いたというとても大きな学校だった当時の大井小学校ですが、少子化の影響で子どもたちの数が少なくなってきました。波瀬小学校、高岡小学校とともに一志西小学校として平成26年にスタートすることになり、結果としてこの大井小学校は歴史を閉じたことになります。地域の方々は寂しい思いをされたと思いますが、当時のことを教えてください。

奥田 私たちも卒業生の一人、あるいは地域住民の一人として、本当に寂しい思いをしました。誰もが、閉校後の行く末をとても心配して、いろいろと提案はするのですが、決め手になるようなものはありませんでした。

市長 地元の皆さんには、いくつかアイデアがあったのですか。

奥田 住民の意見を聞くために、かなり詳しくアンケートを取りました。避難場所として活用してほしい、文化センターにする、生涯学習の場として活用するなど、最終的には6項目ほど案が出ました。

市長 地域の方の会議室として使うなどですね。

奥田 子育て支援施設や、手狭になった他地区の幼稚園をここに移転してはどうかという案、さらに学童保育として使ってはどうか、という意見もありました。

活動を知ってもらうことが大事 地域の皆さんに理解広がる

市長 いろいろな意見が検討されていましたが、実はそれとは別に、この中にないアイデアもひそかに検討されていました。ここで玉村校長に登場いただくわけですが、この小学校との出会いの前にまず、玉村先生がこれまでどのような取り組みをしてきたのか教えてください。

玉村 私たちは隣の松阪市嬉野町でNPO法人として、11年間にわたって、不登校の高校生の支援をするスクールを運営していました。生徒や先生の人数が次第に増加し、何よりいろいろなノウハウが蓄積されて、何とかこの子どもたちの学校ができないかと検討してきました。その中で、津市からこの大井地区のことを紹介していただきました。実際にここに来てみると、地域の方々がとても教育熱心で、学校の再活用に関して、真剣に議論されている様子を見て、私たちもぜひその輪に加わりたいとお願いしました。

市長 以前はNPO法人として運営されていたフリースクールですね。何かの事情で、通っている学校には行きづらくなったという生徒の居場所を提供してこられた。この場合は、通信制高校に入学して、高校卒業資格を目指すということだったのですね。そういうNPO法人の運営するフリースクールを、実際の学校の校舎に移転しようという、非常に思い切ったアイデアが玉村先生の元で温められていたわけですね。奥田さん、玉村先生の夢、構想としてそのお話が届いた時、地域の方はどう感じたのですか。

奥田 当初、地域の率直な気持ちを聞きたいとアンケートを取りましたが、学校をここへ移転させるという意見は全く出ませんでした。学校といっても、幼稚園の一部移転くらいは考えられますけれど。ところが、そうこうしているうちに心配する声が上がり始めました。不登校の高校生たちが来ることに、戸惑いを隠せずにいたのです。その戸惑いを解消してもらうために、多くの時間を要しました。途中、玉村さんにも会議に同席してもらって、地域の皆さんに少しずつ理解してもらったのです。

市長 その時、玉村さんはどんなお話をされたのですか。

玉村 これまで私たちが行ってきた活動を知ってもらうことが大事だと思い、スライドなどを使って説明し、ご理解を得られたと思います。

市長 地域の皆さんと、おおむね合意ができた平成27年12月に玉村さんとの間で、この校舎の3階部分を利用いただく契約を結びました。契約なので、電気代、水道料金なども負担いただいていますし、校舎を借りていただく賃借の使用料もいただいています。玉村さんも一志学園高等学校として運営していくために学校法人の認可を得て、無事に平成28年4月に開校しました。さて、開校後の生徒の皆さんはどのような様子ですか。

玉村 4月に開校し、56人の生徒でスタートを切りました。その後、転学生が相次ぎ、現在15歳から29歳まで61人の生徒が在籍しています(平成28年7月現在)。うち27人が津市内から通学しています。進学校から転学し大学受験を目指す生徒や、小学校から不登校でしたがこつこつと学び直しを頑張っている生徒もいます。2人の生徒がソフトテニスの三重県大会で3位に入賞し、この夏、全国大会に駒を進めました。

市長 生き生きとした生徒の様子を見ていかがですか。地域の皆さんの心配もなくなってきたのではないでしょうか。

奥田 そういった心配はほとんどなくなったと思います。

市長 これからは地域の皆さんといろいろな交流活動が始まるといいですね。

奥田 これまで地域で行っていた行事に参加してもらうことも一つですし、委員会として過去2年間行っている新春元気交歓会に集まってもらって意見を交わしてもらうことも一つ。もう一つは、地域の持っている知的財産を将来にわたって広げていく 温故知新大学を計画していて、平成28年度から事業の一つに加えようと考えています。大きく分けてこの3つに交流の場を広げていこうと考えています。

市長 これから子どもたちもどんどん参加してくれるといいですね。

玉村 地域外から通っている子どもたちが圧倒的に多いので、地域に対して愛着を持ってもらうことや、逆に地域から信頼されて愛される学校になることはとても大事なことだと思います。そのためには、いろいろな地域の方と交流を深めていくことが一番いい。温故知新大学にも、ぜひ入学させていただければと思います。

こだわりは人の中で人を育てる 良い環境をいただいた

市長 高校生が高校を卒業する前に、大学生になるわけですね。地域とのお話を進めてきましたが、さて、玉村さんにもう一つお伺いします。こんな学校にしていきたい あるいは こうなっていけば良い という目標はありますか。

玉村 私たちが長年こだわってきたのは、人の中で人を育てる ということです。いろいろな意味で、人の中で傷ついてきた子どもたちなので、人の中できちんと育ててあげたいと思っています。この旧大井小学校の校舎を地域の方と共有することで、教員、生徒だけでなく、たくさんの人と交流させていただいて、子どもたちを育てることができる。そういった良い環境をいただいたと思っています。それをどんどん広げて、私たちの理想とする教育を実現したいと思っています。

市長 すでに来年度の生徒募集も始まっているのですか。

玉村 はい。中学校、高校から問い合わせをいただいています。前の学校では合わなかったけれど、もう一度学校生活をしたい、そういう生徒にぜひチャレンジしてほしいです。

市長 105年の歴史ある旧大井小学校ですが、地域の皆さんのご理解の中で、どんどん新しい形が進んでいます。学校が学校として再生する素晴らしい事例が、今進みつつあります。この旧大井小学校の校舎が、これからも地域の皆さんの活動の場として、避難所として活用されるのはもちろんのこと、さらに学びの場として、若い子どもたちが新しい息吹を吹き込む、そういった素晴らしい事例になりつつあるということをご紹介しました。
奥田さん、玉村さん、本日はありがとうございました。

奥田 ありがとうございました。

玉村 ありがとうございました。

NPO法人大井町づくり委員会理事長 奥田吉信さん

昭和8年7月1日生まれ。昭和31年3月三重大学農学部卒業、平成6年3月三重県立伊勢高等学校長退職、平成6年4月梅村学園松阪大学事務局に勤務し平成11年3月同大学退職、平成27年10月20日に住民の交流拠点として、地域維持活性化を図ることを目的とする大井町づくり委員会設立。

学校法人玉村学園 一志学園高等学校校長 玉村典久さん

昭和33年8月28日生まれ。昭和56年3月北海道大学経済学部経済学科卒業、昭和60年4月県立尾鷲高等学校教諭、平成17年4月任意団体チャレンジスクール三重代表、平成17年9月特定非営利活動法人チャレンジスクール三重理事長、平成28年4月学校法人玉村学園一志学園高等学校校長


 

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