「広報津」第259号(音声読み上げ)表紙

登録日:2016年10月1日

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表紙

広報津 平成28年10月1日 第259号

きれいな教室でいただきまーす!

写真 給食前のひととき(7月7日 南が丘小学校)

第26回市長対談 造る時代から使う時代へ

日本経営協会専任コンサルタント 川嶋幸夫さん 津市長 前葉泰幸

平成28年8月5日、市本庁舎に日本経営協会の専任コンサルタントであり津市公共施設等総合管理計画策定・推進会議アドバイザーの川嶋幸夫さんをお迎えし、津市が取り組む公共施設等総合管理計画の策定に関して、前葉泰幸市長がお話を伺いました。

市長 川嶋幸夫先生は公共施設マネジメント専門のコンサルタントで、全国15の自治体のアドバイザーを務め、全国各地を飛び回っておられ、津市の公共施設等総合管理計画の策定にも助言をいただいています。総務省から各自治体に 公共施設等総合管理計画を作りなさい という要請があったわけですが、その背景からお話しいただけますか。

川嶋 今から40年から50年前のことですが、高度成長期に多くの自治体で人口が急増しました。人口の急増によって増加した行政需要に応えるために公共施設を造ったのですが、年月を経てその老朽化が激しくなり、対応に追われていることが背景の一つです。二つ目には、公共施設の耐震化も避けて通れない問題ですし、障害者差別解消法が施行されたことに伴うバリアフリー対策などが大きな課題になっています。少子高齢化が進み、人口が減り、高齢者が増えるなど社会環境の変化も見逃せません。子育ての重要度が増したことで行政需要も変化しています。当時造った公共施設がそのまま使えるのかなど、変化する社会環境に対応しなければなりません。三つ目には、各自治体は、リーマンショック以降財政が厳しくなり、公共施設の整備・保全にお金を回す余裕がなくなり、そのまま積み残されるということが多分にあると思います。もう一つは、市町村合併を行った関係上、類似の施設が重なる形で、旧自治体ごとに整備され、使い切れない施設を多く抱えています。全体を見た時に最適な状況にしていくことが大きな課題になり、総務省は平成26年4月、公共施設等総合管理計画の策定を各自治体に要請しました。

市長 総務省からの要請は、平成26年・27年・28年の3年間のうちでの計画作成であったので、あえて3年目を選びました。なぜなら、平成18年の合併から10年間で公共施設を造り直すということが合併時の約束でした。例えば、学校の耐震化・大規模改造、総合支所の改修や改築、一部建て替え、大きなプロジェクトである新斎場いつくしみの杜やリサイクルセンター、新最終処分場、文化観光施設として美杉総合文化センターや道の駅津かわげの整備などを進めてきました。これらの整備を10年間でやり遂げ、その翌年度に公共施設等総合管理計画を作成しようということで、今年度になった経緯があります。 

川嶋 現在、津市が抱える公共施設約1,100件、延床面積約110万平方メートルを、市長としては今後も整備を続けていくのですか。

市長 難しいご質問ですが、合併10年間にやり切れなかったことは何としても進めます。具体的には、サオリーナや久居ホールは、実際に取り掛かっているところです。総合支所も完成しました。また、援護課が入る旧社会福祉センター、津北工事事務所が耐震診断の結果難しい状況なので、こちらも進めていきます。それから、消防署の建て替え、子どもたちのためには、昭和40年代の校舎がたくさんありますので、大規模改造を進めていきます。また、待機児童ゼロを続けるためにもこども園の整備も行います。そして、平成30年にインターハイ、平成33年に国体が行われるので、体育館に手を加えるなど、まだまだしなくてはなりません。それから、公民館やコミュニティー施設が古くなっているので、出張所も含め建て替えの要望もたくさんあります。こういった中で、公共施設をどうしていくか、非常に悩ましいところです。

縦割りを廃して多目的に施設を徹底的に使い切る

川嶋 2市6町2村で合併し、面積が非常に大きくなったという点や海・山・市街地・農村といった地域特性を考えたときに、古い施設もある程度見直さなければならないと思います。約1,100の施設、延床面積約110万平方メートルの実態を現況把握しているのか教えてください。

市長 これは問題意識として私自身も持っていて、総務省からの要請がある前年の平成25年に施設カルテを作りました。各施設のデータを整理して、ホームページでも順次公開しています。この施設カルテは、川嶋先生もご覧いただいていますよね。

川嶋 この間、津市の担当者から分厚いファイルが5冊送られてきました。大きな段ボール箱が届き、足の踏み場もないような状況になりました。それだけたくさんの施設がありますが、一番大きな課題は40年から50年経った老朽化施設をどうするかです。津市の場合、1976年ごろから40年ほど経過している施設がたくさんあるのがグラフを見ると分かります。築後40年経過した施設は約2割ですが、問題は、その予備軍である30年経過した施設が次に控えていることです。さらにその20年先もこういった施設があり、津市では、築40年から20年までの間の施設をトータルで見ると相当老朽化しているのが見えてきます。約110万平方メートルの内の7割から8割がこのあたりにある。早急に対応していかなくてはなりません。

図 津市の公共施設の築年別整備状況
1970年代、1980年代に建設が集中しているため、大規模改修や建替えなどの更新時期も一斉に訪れる。

  • 第1のピーク 1970年代(旧耐震基準に相当)
  • 第2のピーク 1984年から1987年まで
  • 第3のピーク 2000年から2004年まで

市長 公共施設は築後30年あたりで手を加えないと耐用年数まで維持できません。もう一つは、その時代に何が必要だったかと、今何が必要かが変わってきています。時代が変わっても必要とされる施設を提供したいのですが、今後の見通しも含めてご助言いただけますか。

川嶋 今まで津市が整備してきた公共施設は、対象者別・目的別・国の補助金別と整理されてきた関係上、全部縦割りです。ですから、相互の利用ができず使い切れていない施設がたくさんあると思います。例えば、保健センターという施設は、健診を行うのは年間3分の1ぐらいで、他の空いた時間をもっと多目的に使えるように工夫することで、有効に利用できます。

市長 各所管の縦割りをどう廃していくか、例えば教育委員会が所管する学校を地域で活用するコミュニティールームにするなど取り組んでいます。特に大規模改造のときが議論するチャンスですよね。

施設を点で見るのではなく地域を俯瞰して面で捉える

川嶋 どちらかというと、今まで行政は公共施設を造ることを目的にやってきたイメージですが、公共施設とは何か をもう一度考え直す良い機会です。公共施設を有効に使ってまちづくりを進めるために、施設造りをするのではなく、まちづくりをするための基盤だと考えることが重要です。新しく造る時代ではなく、賢く使う時代かと思います。

市長 施設をどう使うかということですが、これからの時代は人口構造も変化してきます。津市の今後の人口動向という点から、公共施設がどうあるべきかが関係してきますし、財政にも影響があります。

川嶋 現在人口は28万人です。これが15年、30年経ちますと、22万人まで減少していきます。人口が減り、働き手が少なくなることで、税収が大幅に減少します。もう一つは、普通交付税が合併算定替えの特例の期限を迎えますので、収入がこれから大きく減少していくのは避けて通れない課題になります。

市長 未来に向けて、健全財政を維持しながら必要な行政サービスを提供していくのは、津市の大きな責任です。子や孫の世代まで津市が住み続けるのに快適な場所であるためには、行政がしっかりと取り組まなくてはなりません。その一つが公共施設ですが、これから公共施設の在り方としてどういう方向性がありますか。

川嶋 大きく3つの視点があります。一つは、総量・配置の見直し、二つ目は有効に使うこと、三つ目は効率的に運営していくという3つの視点から約1,100の公共施設をチェックして、本当に今の状況でいいのか点検していかなくては、将来に大きな禍根を残すことになります。

市長 集約化・複合化・有効利用・共同利用といったことを津市でも取り組み始めていますが、今ある施設をどう工夫して使うかも大切ですし、もう一つは、古い施設を造り変えるときに新しい時代にふさわしい施設にしなくてはなりません。国がそういうことを地方債などで支援しようという仕組みもできているようです。地域の在り方と公共施設の関係も含めてお話しいただけますか。

川嶋 これからの公共施設の見直しに当たって、配置の適正化、総量の見直しをしていく手法として集約化の話や複合化の話が出てきます。それ以外にも、一つの施設を周辺を含めて面的に見ることが重要です。施設をピンポイントに見るのではなくて、その周辺にある施設を俯瞰的に見ていくと、たくさんの類似した機能を持った施設が配置されていることがわかります。有効に使えるはずのキャパが残っていても縦割りにやってきた関係上、結果的に使い切っていないことになります。そこを相互利用することや、複合化の視点から有効に使っていくことを考えなくてはいけません。いろいろな自治体に助言しているのは、公共施設を使い切ってもらいたいということです。使い切る とは二つあり、一つは耐用年数まで時間軸でしっかり使っていくということ、もう一つはどうやって他の用途に使い切っていくかという考え方で、一つ一つの施設を点検していく必要があります。

課題を自主的に解決する新しい地域経営スタイル

市長 お話を伺っていますと、地域をどう経営していくのかと公共施設に大きな関係があると思いますが、その際に高齢化が進むので、コンパクトでも近くで利用しやすい、歩いて行ける施設のニーズもあります。一方で、今までのようにある程度人が集まれる施設も必要です。そのあたりをどう整理していけばいいのでしょうか。 

川嶋 地域にはたくさんの施設があります。公民館やコミュニティーセンターなどを使って市民の皆さんはいろいろな活動をしています。こういった活動を行政の方も制度として支援しているわけです。ただ、津市は多くの自治体が合併したので、全部一律に行うのは難しい。旧自治体の歴史や文化があるので、そのたくさんあっていいやり方をどう実現していくか、きめ細かい行政を展開していくにはどうしたらよいかの考え方として、こういう公共施設を有効活用して地域の課題を自分たちで解決できる仕組みを作っていくことが必要だと思います。

市長 一定の場所が必要ですが、それが縦割りで使われるのではなく、いろいろな形で使われ、そういうステージをどう作っていくかですね。例えば出張所は出張所として造るというよりも、いろんな機能を組み合わせた場所として使うということですね。

川嶋 地域には集会機能を持った施設としてコミュニティーセンターや集会所などがあります。それから集会機能を持ち、他の用途で使っている公民館や隣保館などの施設もあります。また、文化施設もそうです。本来の目的に支障のない範囲で集会目的としても使える庁舎や、保健センターも検診をしていないときは十分に集会所として使えます。津市の状況を見ると、このような施設が全体で約400あります。これを全部地域の皆さんが使いこなせれば、新しい施設を造らなくても十分に集会できる場所はあります。こういった施設を使って、地域の皆さんが地域の課題を自分たちで解決していく新しい地域経営スタイルをぜひ作ってください。また、その時に公共施設の再編を手掛けるといいと思います。ただ、気を付けてもらいたいのは、公共施設を地域の皆さんに任せますよと提案すると、押し付けられたというイメージになりかねません。そこで、新しい仕組みを作って、行政から地域に移譲していく一方、施設の費用についてはしっかりサポートする。自主的な活動を支えるための人・もの・お金・情報を提供していく仕組みもしっかり作って、ハード・ソフトの両面から地域経営のスタイルを確立できれば、全国にもまれに見る新しい地域づくりができます。

市長 公共施設の再編を公共施設にずっと着目して考えていましたが、川嶋先生のお話を伺うと、地域をどう経営していくか、につながることがよく分かりました。人口28万の市民のために、そしてその子や孫のためにこの地域がどうあるべきかということも含め、きちっと見据えながら計画を作っていかなくてはならない。私も非常に責任重大ですね。

川嶋 市長が率先してやるというのも大事ですが、ぜひお願いしたいのは、市職員や市民の皆さんも、新しい感覚で意識改革をしないと、大きなシステム変更はできません。これからは造った施設をどう使って、行政課題をクリアしていくのか、その手段としての公共施設なので、今ある公共施設を賢く使い、将来の市民の皆さんに残していけるかが大きな課題になってきます。津市で新しい仕組みを作り、大きなうねりを実現していただきたいと思います。

市長 市民の皆様からもこの公共施設等総合管理計画策定に向けてご意見をお寄せいただきたいと思います。市役所職員は計画作りにさらに力を注いで全力で取り組みます。また、市議会の皆さんにも公共施設等総合管理計画の案ができた段階でご覧いただいて、そういった意見も踏まえて作り上げてまいります。

日本経営協会専任コンサルタント 川嶋幸夫さん

自治体の公共施設マネジメント、行財政改革が専門分野。全国各地で自治体向けの研修や講演会を行う。高松市、三原市、松阪市をはじめ15を超える自治体でアドバイザーなどを務める。


 

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