「広報津」第268号(音声読み上げ)あけぼの 第22号

登録日:2017年2月16日

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折り込み紙3

津市人権教育広報 あけぼの 第22号

平成29年2月16日発行
教委人権教育課 電話番号229-3253 ファクス229-3332

すべての子どもが、ありのままで受け入れられること

私は、女の子?それとも、男の子?

そんな疑問に悩んでいる子は、実は少なくありません。ある調査によれば、約13人に1人が性的マイノリティーとされています。

平成27年4月30日に文部科学省から性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等についてという通知が出され、教職員に対してからだの性とこころの性が一致しない子どもたちへのきめ細やかな対応を求めました。この通知の中では、こうした悩みや不安を受け止める必要性は、性同一性障害の子どもだけでなく、いわゆる性的マイノリティーとされる子どもたち全体に共通するものだとしています。

数の多さで、当たり前が決まるわけではありません。マイノリティー(少数派)だから恥ずかしい存在なのではありません。しかし、進路、就職、恋愛、結婚などさまざまな場面で周囲の無理解や偏見により、少数派は苦しみます。

ホモやオカマなどの揶揄する言葉が笑いながら交わされている集団の中にいることが耐えられないと感じている性的マイノリティーの子が目の前にいるかもしれません。性的マイノリティーの子どもが身近にいないのではなく、いないと思われているからこそ起きている問題というのがたくさんあるのではないでしょうか。

性的マイノリティーとされる子どもたちが、ありのままで受け入れられ、安心でき、幸せになるためには、まず、周りの大人が自分の中にある偏見に気付き、この子たちを理解しようとすることが必要です。変わらなければならないのは、この子たちが生きにくいと感じている社会の意識です。

特集 多様な性について考えるでは、性的マイノリティーの問題から、誰もがありのままで受け入れられることについて考えてみたいと思います。

性別は男女の二通りだけ?

みなさんはLGBTという言葉を知っていますか。LGBTは、Lはレズビアン(女性の同性愛者)、Gはゲイ(男性の同性愛者)、Bはバイセクシャル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(からだの性とこころの性が一致しない人)といった性的マイノリティーのそれぞれの頭文字をとった総称です。この性的マイノリティーの人々は日本国内で約7.6パーセント、13人に1人といわれています。 (電通ダイバーシティ・ラボ2015年度調査より)

今回は、自身がトランスジェンダー当事者である、佐野恒祐さんの話を伺いながら、多様な性について考えていきたいと思います。

  • 男の人を好きになったり、女の人を好きになったりという人の例
    からだの性は男
    こころの性は男
    好きの性は男と女の両方
  • 同性の女性が好きという人の例
    からだの性は女
    こころの性は女
    好きの性は女
  • 体は女で生まれたけれど自分は男の子だと思うという人の例
    からだの性は女
    こころの性は男
    好きの性は女
  • 体は男女のどちらかあいまい 自分は男だと思っているという人の例
    からだの性はわからない
    こころの性は男
    好きの性は女

自分自身に違和感

幼少期から、周りの友達や社会との違いを感じさせられ、自分の身体や欲しいと思う持ち物など自分自身の性に違和感を持っている人々がいます。そして、その違和感から違いを隠さなければという意識になり、自分自身を否定してしまうことも少なくありません。また、学齢期には、学校生活のさまざまな場面で、不安を感じたり、悩んでしまったりすることもあります。

佐野恒祐さんのお話

多くのLGBT当事者は、自らのセクシャリティーを思春期までに自覚していると思います。私が学生の頃は、今の時代のようにネットによる情報もなく、自分で調べることもできず、自分でもハッキリしない違和感を誰にも相談する事はなかった、というよりできなかったです。周囲にずっと嘘を付いているような感覚で生きていました。制服のことや、健康診断・宿泊学習などの行事があるときや、休み時間の友達との他愛もない恋愛話でも、自分って何者?と自分自身に違和感を持ち、その悩みを隠すように明るく元気に振る舞う自分がいました。

あんたは、あんたでいいやん!

悩んでいるときに分かってくれる仲間の存在は、勇気をもらえます。佐野さんも友達から言ってもらったある一言が、悩んでいた気持ちを楽にさせてくれたそうです。

佐野さんのお話

私が友達に初めてハッキリしない違和感を打ち明けたのは19歳の時でした。

男とか女とかでなく、あんたはあんたでいいやん。グレーでもいいやん!

友達が言ってくれたこの一言で、気持ちが楽になりました。そして自分らしい生き方をする勇気をもらい、数少ない情報を集めながら男性ホルモン治療などを始め、戸籍上も男性として生きていくことを決めました。手術後、麻酔から覚めた時、そして、家庭裁判所から性別変更許可通知が来た時には、男性として生きてもいいんだ!と、ようやく自分の人生のスタートを切れた感覚で、うれし泣きしたことを覚えています。

生きるって、こんなに楽しいんだ

さらに就職し、その職場で信頼できる上司と出会えたことが佐野さんを変えていきます。始めは仕事の相談がきっかけでしたが、その上司に自分のことを伝えます。

佐野さんのお話

LGBTという言葉も知られていなく、性的マイノリティーについて今よりも理解されていなかった時代に、その上司は私の女性ではなく男性として生きたいという悩みを、当たり前のように受け入れ、真剣に向き合い続けてくれました。自分自身を否定し続けてきた中で、職場で初めて素直な気持ちを伝える事ができ、こんな自分と向き合ってくれる人がいるんだ、生きるってこんなに楽しいんだと、自分の人生の背中を押してくれたように感じました。

一般社団法人エリーの活動を通して

佐野さんは現在、仲間とともにLGBTについての理解を広める活動をしています。

自分もお世話になった上司のように、人の背中を押せる人になりたい。誰かの為に役に立ちたいと考え、勤めていた会社を辞め活動を始めます。また、小学校、中学校で性的マイノリティーについてみんなで一緒に考える場所があったら、両親世代が性的マイノリティーについて考える所があったら、そんな気持ちから、性的マイノリティー啓発活動、住みやすい環境整備、企業や学校現場での児童生徒・教職員向けの研修などに取り組んでいます。

昨年9月には、仲間とともにLGBT啓発イベント 三重レインボーフェスタ2016を伊勢市で開催し、300人を超える参加がありました。また、LGBT当事者やその家族が集まる、にじみえカフェを開催し、当事者が一人で悩みを抱え込まないような環境を作っています。

佐野さんのお話

にじみえカフェに来られた、あるお母さんの、私には3人の子どもがいるんやけど、今は男の子・女の子・トランスジェンダーの子どもを育てられる母親にしてくれて感謝している、という言葉に感激しました。そのお母さんは、子どもがカミングアウトしてくれた時すぐに、相談にのってくれる窓口を探し、全国の医療関係に電話をしたそうです。

悩みながらも親として、ありのままの子どもの姿と向き合ってくれる姿勢が性的マイノリティーの子どもたちに、自分は自分でいいんだと勇気を与えてくれるんです。

相談されたら言ってくれてありがとうを

佐野さんは言います。LGBT当事者探しをするのではなく、相談されたら、言ってくれてありがとうと言ってあげてくださいと。

法律や制度の制定、当事者の啓発活動などにより性的マイノリティーに関する正しい認識は広まりつつあります。社会全体がLGBTなどの性的マイノリティーについて正しく理解し、気付き、その理解を広げていく。性の在り方は多様で人の数だけある。自分が自分らしく生きることができる社会を、みんなで作っていきたいですね。

市民人権講座を開催しました ハンセン病問題を考える

昨年の8月15日、市民人権講座を開催し、三重テレビ放送株式会社報道制作局長の小川秀幸さんのお話を聞くことができました。

小川さんは、取材を通してハンセン病問題に出会いました。そこで今回は、ハンセン病回復者に対する差別や偏見の解消に向けた自身の取り組みについて講演していただきました。

明治40年に制定された、らい予防法によって、平成8年にこの法律が廃止されるまでの約90年間、ハンセン病と診断された患者は療養所に強制収容され隔離されてきました。その政策は、ふるさとを捨てさせられたと思わせるほど患者の基本的人権を奪い、存在を排除するものでした。

戦後、特効薬の普及によって入所者はすでに病気が完治していたにもかかわらず隔離政策が続けられ、らい予防法が廃止された後でも、ほとんどの回復者は、療養所から故郷に帰ることはできませんでした。

その理由の一つとして、一部に未だ病気が感染するのではないかといった誤った認識や社会の偏見が残っていることが挙げられます。

このため、平成21年にハンセン病問題の解決の促進に関する法律が施行され、差別や偏見の解消に向けた啓発を行い、療養所を地域に開放していこうという取り組みが始まりました。県内でも、ハンセン病問題を共に考える会・みえが発足し、講演会・作品展などの啓発活動が行われています。

小川さんは講演の最後に、療養所の中に患者(病気)はない。偏見という病が療養所の外にある、そしてたくさんの市民の方々に、ハンセン病に対する正しい認識と回復者の思いを伝えていきたいと、おっしゃっていました。

文中の、回復者という表現について。現在、療養所にいる人たちは、病気が完治した人たちばかりなので、患者と言わず回復者と呼んでいます。

シリーズ 学校・園では今15 東観中学校の取り組み

東観中学校では、教育目標を、すべての生徒の学びの保障と豊かな人権感覚を持つ生徒の育成とし、学び合いを通して、確かな学力向上と人権意識や望ましい人間関係を築く力を育てることを目指しています。日々の授業のほか、人権教育カリキュラムに沿った人権学習や人権フェスティバル、子ども人権フォーラム、文化祭での学年劇などにも取り組んでいます。今回はその一部を紹介します。

1年生の取り組みから 差別に対して自分は何ができるのか

あっていい違いとあってはいけない違いについて話し合いました。グループやクラスでの活発な話し合いの中で、自分とは違う見方、考え方に気付き、価値観の押し付けが差別につながることを学びました。そして差別に対して自分はどうするか、何ができるかを考えることが大切だと感じました。これをきっかけに、3学期の出会い学習や人権学習を進めていきます。また、1年生では、エンジェルハート週間を何回か設定し、仲間の不安な思いを考えたり積極的に受け止めたりしながら仲間づくりを進めています。

2年生の取り組みから 他人事にしている自分はいないか

絵本、わたしのせいじゃないを基に普段の生活の中で、自分では気が付かないうちに人を不安にさせたり、嫌な思いをさせたりしてしまっていることはないか、また、自分には関係ない、自分のせいじゃないと他人事にしている自分はないかなど、今まで人に向けていた指を自分に向けて振り返ってきました。

文化祭では、絵本を劇にして演じたり、身近にあるさまざまな問題を題材にした劇を演じたりするなどの発表を通して、各クラスでいじめをなくしたい!みんな笑顔で過ごせる学年にしよう!という思いを伝え合いました。

3年生の取り組みから 一人一人の個性や違いを認め合える人になる

学年目標である、身の回りにある差別の実態を知り、差別に気付く力を付けるとともに、差別の解消に向けて自分たちにできることを考え、実践する力を育てるを目標に人権学習を進めてきました。

先日の出会い学習では、エリー代表の山口颯一さんを招いて、LGBTについて学びました。人の数だけ性別はある、人の数だけ個性があるという話から、自分らしさの大切さ、一人一人の個性や違いを認め合える人になることのヒントを教えてもらいました。当日は講演だけではなく、各クラス間での交流もあり、和やかな雰囲気の中、生徒一人一人が自分自身の意識や行動を振り返りました。
 


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