「広報津」第277号(音声読み上げ)表紙、第34回市長対談

登録日:2017年7月1日

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表紙

広報津 平成29年7月1日 第277号

いっぱい採れたかい?

写真 ふれあいのかおり2017 渚のフェスティバルで潮干狩りを満喫する子どもたち(5月28日 香良洲海岸)

第34回市長対談 選択と集中でメリハリある計画を

三重大学理事・副学長 つるおか しんじさん
津市長 前葉泰幸

平成29年5月25日、津市の新たな総合計画の策定に向けての審議会の会長をお務めいただいている三重大学理事・副学長の鶴岡信治さんをお迎えし、合併後12年目を迎えた津市のまちづくりについて前葉泰幸市長がお話を伺いました。

選択と集中でメリハリある計画を

市長 鶴岡先生は三重大学にお勤めです。まずは津市とのご縁をお聞かせください。

鶴岡 私は岐阜県各務原市出身で、岐阜大学を卒業し、名古屋大学の大学院に進んだ後、三重大学に就職しました。それから38年ずっと津市に住んでおり、2人の子どもを育てました。

市長 今の津のまちについて、どんな印象を持っていらっしゃいますか。

鶴岡 津市の良いところは、海があって山もあって、自然環境に恵まれているところですね。私の出身地の岐阜県は海が無いところですが、三重大学はシーサイドキャンパスで海に面しているので、そこが一番気に入っています。それから、やさしい人が多いですね。これは地方都市の良さが一番よく表れているところだと思います。また名古屋、京都、大阪へ出掛けるにも非常に便利なところですね。この津市が、ますます良くなるように、総合計画審議会で議論を進めています。

市長 ご審議いただいている新しい総合計画は、自治体の基本的な方向性を示すものですが、平成23年の地方自治法の改正で、策定は義務では無くなりました。以前はどこの自治体でも同じようなスタイルの総合計画がありましたが、今はむしろ各自治体で自分たちの考え方や独自性、実効性のあるものが求められています。我々も頭を柔らかくして取り組んでいるところで、津市ではこれまでは前期5年、後期5年としていた基本計画の期間を10年にするとともに、基本構想は将来の大きな方向性だけにして期間を定めないこととしました。このような状況のもと、実際に審議会ではどのようなご議論がなされているのかをお話しいただけますか。

鶴岡 計画を作ること自体が目的になってはいけないという第1回の審議会での市長の発言が、委員の方々の頭にあります。やはり、目的は明確にしないといけません。具体性があって、趣旨がはっきりして、はじめて計画が実質的なものになる。だから、津市の総合計画についても、市民の皆さんに十分理解していただきながら進めていきたいと思っています。

さまざまな立場の意見反映 市民生活に密着した内容に

市長 法的な策定義務は無くなりましたが、総合計画が津市における最上位計画であることに変わりはありません。将来のまちづくりの姿を示し、市民の暮らしがこのようになれば、あるいはこのようにしていきたいということが、しっかりと織り込まれていることが大切です。

鶴岡 まちづくりのいろいろな要素の一つとして行政があるわけですが、行政だけで進めると、市民の生活に密着したものにはなりません。総合計画では、いろいろな立場の皆さんの意見をお聞きして、市民の皆さんが住みやすいまちになるようにしていきたいと思っています。

市長 今年度が最終年度になっている今の総合計画は、合併した10の旧市町村で構成された津地区合併協議会が策定した新市まちづくり計画に描かれた将来ビジョンをどう実現するかを示した計画となっています。合併後12年目を迎えた今は、これからどんなまちにしていくかということを白紙の状態からつくりあげていくことになるわけです。このことについては、審議会の会長としてどのようにお感じですか。

鶴岡 以前に比べて津市の置かれている状況はかなり変わってきています。今までとは違った考え方で、この総合計画を審議していきたいですね。

市長 その通りですね。そこで、まずは人口についてお話ししますと、津市の人口のピークは平成20年の28万8,888人で、それ以降、減少傾向にあります。これを分析しますと、津市では出生者数が死亡者数を上回る状況が続いていたのですが、平成17年を境に逆転しています。少子化ということですが、この状況についてどうお感じですか。

鶴岡 全国的な傾向と同じで、これから10年間、この少子化に伴って労働人口が減っていく中で、津市の総合計画を考えないといけません。

市長 出生率を上げていくような政策も考えていかなければいけないのですが、労働人口という意味では、他の地域から転入する人が増えれば成り立つわけです。平成19年、20年くらいまでは比較的その傾向にあったのですが、最近は転出者の方が多くなっています。これは全国的に見られる傾向なのですが、この辺りはどうお考えですか。

鶴岡 津市にいい職場をつくっていくことで若い人たちが集まってくる。それから、津市から若い人が出て行かない。そうしたことをやっていかなければ、転入者が転出者を上回ることは望めないのではないでしょうか。

市長 人口が減っていくと、税収が減ることになります。さらに、もう一つ抱えている問題が、合併したことによる特別の財政措置がだんだん無くなってくるということです。各市町村ごとに算定される国からの地方交付税というものがあって、合併すると一つの市として算定されるので、交付税が減ってしまうことになります。そこで国は、合併しても10年間は合併していないものとして交付税を算定し、本来の交付額より多く交付しているのです。その措置が10年間で、その後5年かけて段階的に縮減して、15年後には交付税が本来の額に戻ります。津市では、28年度から段階的に減らされている最中です。

鶴岡 少しずつ財政的に厳しくなっていくということですね。

市長 それからもう一つ、合併に伴っていろいろ事業を行いますが、それについても特別の財源があります。合併特例事業債というものです。合併に伴って必要となる事業の全体事業費の内、95パーセントまで借金ができるというもので、しかも、返さなくてはならない元利償還金の内、70パーセントを国が地方交付税で補填してくれるという制度ですので、全体の事業費の3分の1程度の負担で事業ができるメリットがあります。これにも15年間という期限があり、そういういくつかの財政的に特別な措置が無くなってくる中でのこれからの10年間というわけです。

地元で就職を望む学生増 受け皿増やす取り組みを

鶴岡 全ての事業を実施していくことは難しいという状況で、住民の意識を盛り込みつつ、優先順位を付けて、選択と集中を行っていかなくてはならないと思います。

市長 その選択と集中について聞いてみた住民アンケートがあります。市民意識調査というものですが、優先的に力を入れてほしい分野と、多少後回しにしても止むを得ないと思う分野について聞きました。優先的に力を入れて欲しい分野は、保健・医療、高齢者・障がい者福祉、子育てでした。一方で少し後回しになっても止むを得ない分野は、地域コミュニティー施設とか、スポーツ・文化、それから商工・観光などが少し高めに出ています。

鶴岡 やはり市民生活に結びついた分野が重要だと感じているわけですね。そういうことが明確になっているので、メリハリのある計画を立てていくことが重要です。いろいろな立場の人がいる中で、総合計画をまとめているので、多くの意見を反映していきたいと考えています。

市長 そういう選択と集中をしていくとしても、最終的には市民の皆さまにご満足いただけるような市政をお届けしなければなりません。同じ調査の中で、津市に愛着を感じていますかという質問をしました。すると79.5パーセントの人が感じているとお答えいただいたのですが、これは4年前と比べると5.9ポイントアップしています。また、今後も津市に住み続けたいですかとお尋ねしたところ、87パーセントの人に、はい、とお答えいただいて、これも8ポイントアップしています。愛着度や、定住志向が上がってきているわけですが、このデータともう一つ、個別の政策にご満足いただいていますかとお尋ねしたところ、4年前は不満という答えが比較的多かったのですが、今回の調査を見ると満足が多くなってきたようです。全体として市民の満足度が上がってきているのではないかと思っているのですが、いかがですか。

鶴岡 市民の満足度については、前回に比べると、不満の部分が減って満足の部分が増えてきたわけですね。それから、従来不満を感じていた分野でも、その割合はずいぶん減ってきているようで、良い市政をされてきたことの表れではないでしょうか。これからも、こういう状態が維持されるような総合計画をまとめていきたいと思います。私が勤務している三重大学の学生に聞いてみたところ、地元に就職したいと考えている人がかなりの割合でいるので、そういう人たちが働ける職場をつくっていただきたい。現在、三重県下の高等教育機関の卒業生で三重県内に就職する人の割合は45パーセントなのですが、10パーセント増やして55パーセントまで上げたい。そういう目的でも、事業に取り組んでいただきたいですね。先日も市長に三重大学に来て講義をしていただきましたが、地域の経営者の方々にも、お話をしてもらって、その様子を撮影したものを、連携している高等教育機関の皆さんにも見ていただいています。学生が地元で就職するのに一番重要なのは雇用です。雇用を増やすには、地元の企業がイノベーションを起こして雇用力を付けることが必要です。そういった足腰の強い地域経済をつくっていくために、三重大学も努力をしていますし、県内の全高等教育機関も、地元に残る人を増やして地域を活性化するために動いています。

生の声を取り入れる工夫 審議会をより良いものに

市長 半分以上の方が県内で就職して、さらに県外から大学進学で三重県に来て、津に入って来られる学生もそのまま就職していただければ結果として地域が活性化するということですね。

鶴岡 他県出身の学生で三重県に残る人が例年5パーセントほどいます。その割合も増やしていこうと思っています。

市長 力強い地域経済がなければ、市民の幸せな暮らしや子どもたちの明るい未来を展望することもできません。そういうことを示していく総合計画ですので、引き続きご審議のほど、よろしくお願いします。

鶴岡 市民の皆さまが幸せに暮らせるまちづくりを描く総合計画を、しっかり議論して進めたいと思います。市民の意見を反映するには市民の参加が非常に重要です。2月に開催された総合計画のオープンディスカッションには、10代から80代までさまざまな年代の方が参加なさっていました。私もオブザーバーとして、皆さんのご意見をお聞きしましたが、自分たちのまちを自らつくっていくというエネルギーが感じられ、審議会のメンバーと共に総合計画をより良いものにしていきたいという思いがいっそう強くなりました。

市長 オープンディスカッションもそうですが、さまざまな局面で市民の皆さまのご意見をいただこうと、例えば市政インタビューをして、各種団体の方からご意見を伺うなどの取り組みもしています。審議会はもちろんですが市議会での議論もありますし、いろいろなご意見を総合計画にぎゅっと凝縮していきたいと思います。私自身も、37地域で半年に1回ずつ開催する地域懇談会の場で市民の皆さまから直接いただくお声は、市政の展開にとって非常に大切だと捉えています。このように市民のご意見を踏まえた総合計画を目指す取り組みの一環として、7月1日から計画案に対するパブリックコメントを募集します。7月22日の土曜日には津のまち未来カフェというイベントを市役所本庁舎で開催します。こちらは、総合計画や津市の未来について市民の皆さまが自由に参加して語り合う意見交換会として企画しています。

鶴岡 素晴らしいことですね。パブリックコメントでいろいろな意見を聞き、津のまち未来カフェで生の意見を聞くということですから、ぜひ私も参加させていただきたいと思います。審議会でもそれらの意見を反映させながら総合計画をまとめていきたいと思っています。

市長 ありがとうございます。今回の津市総合計画は、合併後12年目を迎えている津市の自立に向けて、選択と集中、メリハリの効いた計画にしたいと思っています。市民の幸せのための計画となり、結果として津市に住まう方が愛着を持てるまちとなるよう、私どもも志を高く持って全力で取り組んでまいります。引き続き審議のほど、よろしくお願いいたします。

三重大学理事・副学長 つるおか しんじさん

1954年生まれ。1977年岐阜大学卒業、1979年名古屋大学大学院博士前期課程修了、1979年から三重大学工学部助手、1991年から1992年までアメリカミシガン大学客員准教授、2000年三重大学工学部教授、2009年から2013年まで三重大学大学院地域イノベーション学研究科初代研究科長、2015年から現職。専門分野は、文書画像処理や医用画像処理などのコンピューターシステム、地域イノベーション学。2016年8月から津市総合計画審議会会長。みえ防災・減災センターのセンター長なども務める。


 

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