津市 - 「広報津」第297号（音声読み上げ）市長コラム、市長の活動日記から

このページは、音声読み上げソフトウェアに対応するため、語句のなかで一部ひらがなを使用しています。

20ページ目

市長コラムこども園開設の舞台裏

津市長　前葉　泰幸

この4月、初めて津市立の認定こども園が開園しました。神戸・新町・修成の3つの幼稚園と新町保育園を一つにした津みどりの森、同じ敷地内の幼稚園と保育所を一体化した白山・香良洲浜っ子の3園です。
教育施設である幼稚園と保育施設である保育園、その両方の機能と性質を併せ持つこども園では、これまで幼稚園と保育園に分かれて通っていた子どもたちが、同じクラスで園生活を送ります。
今から2年前、津市が子ども・子育て支援新制度に基づいて新設する認定こども園の整備方針を発表した直後、ある会合の席で津市立の幼稚園教諭から、こども園では水筒はどうするのですかと問われました。幼稚園児はお弁当と水筒を持参し、残ったお茶は家まで持って帰りますが、保育園児は持参しないか、持ってきても残った分は給食前に捨てています。水筒ひとつとっても現行の幼稚園と保育園での扱いは全く異なります。制度が変わっても子どもたちが戸惑うことなくのびのびと園生活を送るためには何から着手すべきなのかを、現場のプロが子どもたちの視点に立ってはっきりと示してくれたのです。
早速、幼稚園教諭と保育士が中心となるこども園検討会議を設置し、幼稚園と保育園の違いを徹底的に出し合い、細かい部分に至るまで丁寧にすり合わせていきました。園の運営・カリキュラム・給食・保健衛生の各分野について、子どもたちのためを第一に議論を重ね、開園1年前には津市立のこども園の姿が見えてきました。
最後まで結論が持ち越されたのは降園時刻の違いというデリケートな問題です。給食後は、同じクラスのなかにお迎えの保護者とともに午後2時に帰る子どもと午後6時まで園に残る子どもが出てきます。対応を検討しようにも、子どもたちにどの程度の混乱や不安が生じるのかは確認のしようがありません。
そこに、実に思い切った提案が出てきました。すでに同年齢の幼稚園と保育園のクラスを隣り合わせで設置していた香良洲浜っ子幼児園で、こども園への移行1年前から混成クラスを試行しようというのです。平成29年度、浜っ子幼児園では幼稚園児と保育園児がほぼ半数ずつ同じ組になるようにクラス編成が行われました。プレこども園のスタートです。
5歳児クラスはそれぞれ18名。らいおん組は幼稚園教諭、くま組は保育士が担任です。職員たちが緊張感を持って見守るなか、子どもたちの順応は早く、すぐに仲良く活動を始めました。幼稚園児の降園時間になると、夕方まで残る保育園児たちともっと遊びたくて、まだ帰りたくないよぅとせがむ子どもが出てくるほどです。子どもの気持ちに区切りをつけることが必要だと考えた職員たちは、午後1時すぎに新しい会を開くことを発案します。名付けて、また明日あそぼうねの会。明日へとつなぐ大切な時間を共にして、子どもたちは会の終わりに互いにハイタッチして別々の部屋へと分かれていくようになりました。
プレこども園では指導計画、行事の取り組み方、歌や読み聞かせの絵本など細かい部分まで幼稚園教諭と保育士とがお隣どうしコミュニケーションを取り合いながらクラス運営を進め、その様子をこども園に移行する幼稚園や保育園の職員たちが実際に見て学ぶ研修会も実施されました。
同時に各家庭へのアンケートも実施し、それぞれ事情の異なる保護者の考えや思いをくみ取って行事を工夫するなどの対応を行っています。
開園を間近に控えた3月1日、新設のこども園で職務に当たる職員にのみ特例的に4月1日付の人事異動を内示しました。異例ともいえるほど早い時期ですが、万全の体制を整えて子どもたちを受け入れるためには通常の直前内示では間に合わないという職員側からの要請を受けてのことです。
90年に及ぶ質の高い幼児教育と温かく包み込むような保育の伝統を調和・融合した津市立の認定こども園は、入念な準備と幾多の試行錯誤を経て、今年度からその第一歩を踏み出しました。