「広報津」第323号(音声読み上げ)表紙、第42回市長対談 三重短期大学前学長とうふくじ いちろうさん

登録日:2019年6月1日

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表紙

広報津 令和元年6月1日 第323号

三重短期大学と共に歩んだ37年間

三重短期大学の とうふくじ前学長を囲んで記念撮影。この日行われた最終講義に教え子ら多くの皆さんが駆け付けた。(3月26日一身田中野)

第42回市長対談 学びに捧げた37年間

 三重短期大学前学長 とうふくじいちろうさんと、津市長 前葉泰幸による対談

三重短期大学の学長を8年間お務めになり3月に退任された とうふくじいちろうさんをお迎えし、大学運営に携わりながら心理学の教授としても教壇に立たれた思いや、昭和57年から三重短期大学で過ごした37年間について前葉泰幸市長がお話を伺いました。

三重短期大学前学長 名誉教授 とうふくじいちろうさんのプロフィール

昭和29(1954)年生まれ。昭和56年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。昭和57年4月三重短期大学法経科専任講師。平成2(1990)年4月同教授(平成18年に生活科学科へ異動)。平成23年4月三重短期大学学長。平成28年6月男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰。平成29年11月三重県教育功労者表彰。

学長でありながら講義も担当 学生の姿を知り元気をもらう

市長 三重短期大学の設立は昭和27年です。戦災を受けた津市は戦後復興の真っただ中、市街地の7割が焼失し経済や市民生活もまだまだ混乱が続いていました。市の財政も極めて厳しい状況の中、戦後の復興はまず教育からという崇高な理念を掲げ、津市は三重短期大学を設立しました。女子教育の振興と勤労学生への高等教育の機会の提供という目的があったわけです。その後時代の移り変わりとともに少しずつ短期大学の方向性も変化してきましたが、一貫して津市立の大学として教育を提供し続け、今や卒業生は2万人を超えています。その67年の歴史の中で、とうふくじ先生には半分以上の37年関わっていただきました。まず赴任した当時の、初めて三重短大に足を踏み入れたときのことを覚えていらっしゃいますか。

とうふくじ 率直な感想としては小さいなというものでした。その後、学生たちと関わっていく中で、やりがいを感じていくようになりました。というのも、当時はまだ28歳でしたので、学生とも10歳しか離れていなかったわけです。そういった気安さからか心理学を学びたいという学生が時折研究室にやってくるようになり、やがてその学生たちと読書会を始めるようになりました。その読書会は学生たちが卒業するまで続き、今でも年賀状をやり取りしています。

市長 20代の若い先生が学生たちにとって親しみのある存在だったのでしょうね。テニス部の顧問もしていらっしゃったとか。

とうふくじ 学生時代に硬式テニス同好会に所属していたこともあって、テニス部の顧問を引き受けることになりました。部員たちとは和気あいあいと活動し、夏休みなどは大会のための練習や合宿に私も参加していました。

市長 心理学がご専門ですが、実は研究の分野は多岐にわたり、生涯学習や男女共同参画などの分野にも大きくご貢献いただきました。

とうふくじ 最初の2年間は心理学の実験的な研究に取り組んでいました。昭和59年に本学に地域問題総合調査研究室ができると、私も生涯教育プロジェクトのメンバーとして参加し、三重県の生涯教育の現状と課題をテーマに研究を行い、成果をまとめました。それ以降、三重県や県内の市町の生涯教育振興に関わるようになり、2000年に津市で開催された日本女性会議2000津には準備会、そして実行委員会の委員として参加しました。その経験を一過性のものにしないために、大会終了後も学生や市民の皆さんの意識調査を行ったり、また県や市の男女共同参画審議会などにも関わってきました。そのため本業の心理学よりもむしろ男女共同参画をテーマとした講演の方が多くなりました。

市長 生涯学習から男女共同参画へと非常に新しい分野に携わってこられたこれまでの活動が大きく評価され、平成28年6月には男女共同参画の功績として内閣総理大臣表彰を受賞されました。

とうふくじ 最初に表彰の話をいただいた時は、何かの間違いじゃないかと思いました。県内にはこれまで男女共同参画推進に関わってきた方々が大勢いらっしゃいますし、何よりも日本女性会議2000津の実行委員長の土川禮子先生がまだ受賞されていなかった。ですから辞退することも考えましたが、悩んだ末にありがたく受賞させていただくことにしました。現在も津市をはじめ男女共同参画審議会に関わっているので、今後も引き続き貢献していきたいと考えています。

市長 ありがとうございます。土川先生は、平成30年に内閣総理大臣表彰を受賞されました。こういう新しいテーマへ取り組みながら大学の教壇に立つ中で、平成23年に学長に就任なさいます。就任に当たって心掛けたことや取り組みについてお話しいただけますでしょうか。

とうふくじ 先日、退職に当たって片付けをしていたところ、学長就任時に受けた新聞のインタビュー記事が出てきました。そこには、地域とのつながりを大切に市民に愛される学校にしたい、市民も学校を利用できる環境づくりに取り組みたい、という私の初心が載っていました。上野前学長時代に設立された地域連携センターを活用して、オープンカレッジや出前講座など一定の地域貢献ができたのではないでしょうか。

市長 市民に開かれた津市立の大学として、地域連携やオープンカレッジについては非常に力を入れておられ、先生にも大きなご貢献をいただきました。加えて、大学の経営という学長としての責任も果たしていただきましたが、大学をまとめる立場というのはいかがですか。

とうふくじ 学校教育法が改正されてから学長のガバナンス(統治)が非常に強調されるようになりました。その点で大きな責任を感じつつ、これまでのように教授会の機能も尊重しながらまとめていく苦労はありました。

市長 学長である傍ら生活科学科教授としても教壇にお立ちになりました。もっと大きな大学だったら、そういう姿はあまり見掛けません。三重短大ならではの姿なのでしょうか。

学長とは広告塔。多忙なスケジュールなんのその

とうふくじ 確かに一般的には学長が複数の講義科目を持つことはあまりないでしょう。私の場合は講義を担当して、さらにゼミも担当していました。生活福祉・心理コースに心理学を専門とする教員が私しかいなかったという事情もありますが、ただ、日々学生と接することで直に学生の姿を知ることができますし、私自身も学生から元気をもらえるところに魅力を感じておりました。

市長 学生に教え、語らいながら研究を深めていく。そういう意味で生涯現役でいらっしゃったわけですね。そういう多忙なとうふくじ先生が、学外のお仕事も数多く引き受けられました。これは時間を作るという意味でもなかなか大変だったのかと思いますが、どういうお考えからですか。

とうふくじ 私は学長は広告塔でもあると思っています。本務に支障のない限り、委員会の委員を引き受けたり、お声掛けいただいた行事になるべく参加したりするようにしていました。

市長 その一つに全国公立短期大学協会があり、そこの会長を4年間お務めいただきました。津市立の三重短期大学学長が全国の公立短期大学協会のトップをお務めになる。我々津市民にとって非常に誇らしいことですが、これまた大変でいらっしゃったでしょう。

とうふくじ 結構大変な4年間でした。というのも、高大接続改革とそれに伴う入試制度改革、大学授業料の無償化、新しい高等教育機関の創設など、国が矢継ぎ早にさまざまな施策を打ち出してきたため、私自身4年間に3回中央教育審議会のヒアリングに応じました。副会長や協会の事務局長も精力的に動いてくれましたので、なんとか会長職を務め上げることができました。

市長 さて、三重短期大学についてもう少し話を広げさせていただきたいと思います。卒業生の状況についてですが、市内に就職する人のうち市内出身者は半分以下なんです。半分以上は津市外から来た県内の人、あるいは県外の人が津市内で就職しています。簡単に言えば入れ替わりがあるということです。従って、三重短大は多くの津市外からの学生を受け入れ、かつ、この場所にとどまって就職する人も大勢いるといえます。

もう一つ気になるのは、公立の短期大学ですから収支はどうなっているのかという話です。授業料、入試の検定料などの収入は3億4,000万円です。支出の方は人件費や運営経費などで5億9,000万円。2億5,000万円を毎年持ち出しているように見えますが、実は短大を設置している自治体には地方交付税が入ってきます。それが3億1,900万円。単年度の収支でいうと6,900万円プラスになっている。これが三重短期大学の財政上の計算です。もちろんここには、校舎を建てるお金や、その減価償却費などは含まれていないあくまでフローの数字です。しかし、三重短大があることについて学費が安いが収支は釣り合っているのか、例えば先生方の人件費を市民の税金から支払っているのではないか、と感じている市民の皆さんに実はそうではないという話をさせていただいています。津市として高等教育機関を維持していくことは、経営もしっかりと管理しながら判断しなければならないということです。その上で三重短大の魅力、2年間の大学としての強み、先生が感じた特色などをお話しいただけますか。

ダイバーシティに地域貢献さまざまな三重短大の魅力

とうふくじ 学生からすると授業料が安いことが一番の魅力かもしれません。同時に2年間でしっかりとした教育を受けることができて、資格も取得できます。私からすると本学の特長は社会科学系と自然科学系の学科が存在する総合短大であり、全国各地から学生が集まるとともに、法経科第2部では多様な年齢層の学生が混在しているので、現代のキーワードであるダイバーシティを実現しているところにあります。さらには教員と学生の距離が近くてアットホームな雰囲気もあり、地域貢献に注力しているところも魅力の一つだと考えております。

市長 多様な学生を受け入れているのが、今の三重短大の姿であろうかと思います。公立短期大学は形を変えていくところが多くなっていますが、今後三重短期大学はどうあるべきか、立場を離れられた今、少しお話しをいただけますでしょうか。

とうふくじ 今年の3月初旬に東京で学長セミナーというものがあり、私も出席してきました。3人の他大学の学長が基調講演をされていましたが、共通していたのは、知識がインターネットから得られるようになった現代社会において、大学の役割とは、考える力を育むことだというところで一致していました。

また、個性化を図ることが大切だということもおっしゃっていました。三重短大になぞらえて考えると、まず基本的な概念を身に付けることが大前提になりますが、その上で、津市立の高等教育機関として津市固有の課題について、教員と学生が一体となって考えて、さらに政策への提言までできれば素晴らしいと個人的には思っています。一昨年から三重短大では、将来の在り方についていろいろと検討しており、そのリーダー的な役割を果たしてくださったのが村井新学長です。村井学長は就任1年目から具体的な改革に乗り出すと思うので、ぜひ温かい目で見守って、できるところでのご支援をお願いしたいです。

市長 これからの時代の変化、取り巻く環境の変化に応じて三重短期大学も少しずつ姿形を変えていかなければなりません。ただ一番根っこにある、建学の精神と、地域貢献、そしてどのような教育をするのかという使命をしっかりと我々設置者側も受け止め、大学においてもそのような活発な議論を期待しています。

最後に三重短大で学ぶ学生たち、これから三重短大で学びたいという未来の学生たちへメッセージをお願いします。

とうふくじ 物理的空間としては、三重短大は狭いかもしれませんが、そこでの体験は四次元的な広がりを見せると思っています。どのくらい広げられるかはその人次第なので、しっかりとテーマや目標を決めて学習に励むことが大切です。2年間という短い時間ですが、人生の礎となるような教養や能力を育んでいただきたいと願っています。

市長 ありがとうございます。津市としても、しっかりと大学の経営をサポートし、設置者として責任を果たしてまいりたいと思います。


 

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