登録日:2025年2月19日
令和7年度に重点的に取り組む教育施策の方針について、御説明申し上げます。
令和6年度は、新しい教育大綱、2年目を迎えた教育振興ビジョン後期計画、そして総合教育会議の議論等を踏まえ、学校教育と社会教育の両面にわたり取組を進めてまいりました。
とりわけ、教育振興ビジョン後期計画にある重点施策については、「津市架け橋プログラム」が市内全ての小学校区でスタートし、子どもの主体性を大切にした幼児教育に着目し、公私立の就学前施設と小学校の関係者が、幼児教育と小学校教育の接続を進める中で、それぞれの取組の改善、充実につなげようとしているところです。また、「学校と地域が一体となって進める教育」については、子どもが主体となる教育活動につなげるため、各地域の特色をいかしつつ、子どもたちの地域学校協働活動への参画について議論が進められています。さらに、「津市GIGAスクール構想の実現」については、1人1台端末を活用する中で、「教師が教える」から「子どもが主体的に学ぶ」授業への転換を図るべく、全ての学校で授業改善に取り組んでまいりました。そして、更なる改善を進めるためには、子どもたちに課題の設定や情報の収集・整理・分析方法等問題解決の基礎を学ぶことを含めた情報活用能力をつけていくことが必要であるという課題が明確になったことから、それらの育成を図りながら授業力の向上に努めてまいります。
一方、いじめ等の問題行動の発生や不登校児童生徒の増加は、数年来の全国的な傾向であり、本市も決して例外ではありません。このような今日的な教育課題を解決するためにも、学校は今以上に子どもの個性が尊重され、安全かつ安心して学習できる場を提供する必要があります。
令和7年度も、令和6年度の取組を踏まえ、多様な全ての子どもたち一人一人が大切にされ、子どもが主体となって学び合うことができる授業改善を始め、様々な教育課題に対し、前向きに、かつ着実にしっかりとその役割を果たしてまいります。
教育振興ビジョン後期計画の重点施策の1つである「乳幼児期から小学校への連続した学び」については、令和4年度から「津市架け橋プログラム」の取組を進めてきており、令和6年度は、全ての小学校区で架け橋期カリキュラムを作成し、就学前施設と小学校の関係者が、子どもの姿を中心に据えた語り合いを通して、乳幼児期からの学びの連続性を大切にしながら、教育課程の接続を意識した取組を進めています。
令和7年度は、全小学校区において作成した架け橋期カリキュラムについて、園及び学校体制での実施・検証を行い、接続期の保育や授業を見直すとともに、これまで進めてきた小中一貫教育の取組につなげることで、系統的・連続的な子どもの学びを保障してまいります。とりわけ、幼児教育においては、公私立の就学前施設の関係者が更に連携し、子どもたちが、遊びの中で、「やってみたい」から始まる学びの芽を育むことができるよう、環境を通して行う教育のより一層の充実を図ります。
「学校と地域が一体となって進める教育」については、学校長によるめざす学校・子ども像の発信や学校の課題についての熟議を図るとともに、それぞれの地域の特色をいかし、学校を核とした地域づくりを行うなど、学校運営協議会と地域学校協働本部が連携・協働し、両輪となって取組を進められるよう支援してまいります。とりわけ、地域学校協働活動に子どもたちが主体的に参画する取組を進め、自己肯定感や自己有用感を育むとともに、学校で学んだ知識等を地域の中で活用することで、社会の担い手としての自覚を醸成する取組につなげてまいります。
「津市GIGAスクール構想の実現」については、タブレット端末や大型テレビ等のICT機器と授業支援クラウドやデジタル教科書等のデジタル教材を効果的に活用し、全ての学校において、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させた、学習者主体の授業づくりに努めています。
今後は、多様な全ての子どもたちが、主体的に学ぶことができる授業へ転換していくために、言語能力、問題発見・解決能力とともに学習の基盤となる資質・能力として位置付けられている情報活用能力の育成を図ります。そのため、指導主事派遣による校内研修や経験年数に応じた研修、相互授業公開等を実施するなど、教職員の授業力や対応力の強化を図るとともに、ICTに係る運用管理業務を外部委託することにより、指導主事が学校訪問や研修会に従事する時間を確保し、授業改善の一層の推進を図ります。また、学びを支える人的支援を行うとともに、計画的な1人1台タブレット端末の一斉更新のため令和7年度に調達を行い、令和8年度から新端末を活用します。
特別支援教育については、インクルーシブ教育の理念の下、誰もがその能力を発揮し、共に認め合い、支え合い、誇りを持って生きることができるよう、多様な学びの場における適切な指導と必要な支援のより一層の充実に努めます。具体的な取組としては、「津市版特別支援教育ハンドブック(改訂版)」等を活用し、ユニバーサルデザインの視点をいかした授業づくりの充実を図るとともに、学校サポーター及び特別支援教育支援員等の支援や、三重大学等の関係機関などとの連携により、適切な指導及び支援につなげます。また、必要に応じて、通級指導教室や幼児ことばの教室での支援を行うとともに、個別の指導計画等を作成・活用し、園や学校における途切れのない対応に努めます。これらの取組を進めるため、特別支援教育指導者育成研修等の各種研修をより一層充実させ、全ての教員が、特別支援教育の視点を持った対応ができるよう指導力や対応力の向上を図ります。
人権教育については、子どもたち一人一人の人権意識を高め、園や学校が、全ての子どもたちにとって安心して学べる場となるよう、人権教育カリキュラムに基づいた取組を進めてまいります。
外国につながる児童生徒への教育については、初期日本語教室「きずな」及び「移動きずな」の更なる充実を図るとともに、初期の日本語学習を終えた子どもたちが、在籍クラスにおいて効果的に学ぶことができる指導方法について引き続き実践研究を進めてまいります。また、就学前日本語教室「つむぎ」を引き続き実施し、就学前の外国につながる幼児が、入学した小学校で戸惑うことなく、小学校生活に早期に適応するとともに、保護者の不安が少しでも軽減されるよう、取組のより一層の充実を図ります。
不登校児童生徒については、年々増加傾向にあり、その要因・背景はより複雑化・多様化しているため、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することをめざしていけるよう、教育支援センター(ほほえみ教室、ふれあい教室)を中心に、三重大学・津市子ども教育センターを始めとする関係機関等と連携を密に支援してまいります。また、校内教育支援センターでの取組やICTの効果的な活用等を一層充実させ、様々な理由で教室に入れない児童生徒が、安心して学べる場を提供してまいります。
いじめ等の問題行動への対応については、「いじめ防止対策推進法」や「津市いじめ防止基本方針」、及び「生徒指導提要」等に基づいた対応の徹底を図り、いじめを積極的に認知し、いじめを見逃さないという姿勢を教職員で共有するとともに、生徒指導はもとより、全ての教育活動を通じて、いじめの未然防止、早期発見・対応に向けての指導及び支援を行い、いじめを生まない環境づくりに努めてまいります。
また、虐待、ヤングケアラー等の課題については、児童相談所や福祉部局等の関係機関と連携するとともに、多様な専門的職種と連携したチームによる組織的対応により、課題の改善に向けた取組の一層の充実を図ります。
さらに、子どもの時からメンタルヘルスケアに心がけることができるよう、個々のセルフケアを高めることを目的としたオンラインメンタルヘルスケアシステム「KOKOROBO-Junior」等を導入し、関係機関との連携の下、児童生徒のメンタルウェルビーイングを育む取組を進めます。
水泳授業については、学校プールの老朽化が進む中、自校プールでの水泳指導が困難となった小学校において、民間や公用プールの活用、学校プールの共用化を行うことにより、子どもたちに水泳授業を受ける機会を、引き続き確保してまいります。
これらの様々な取組を進めるに当たっては、教職員の負担軽減を図りつつ、子どもの成長に関わることができるような時間を確保するため、働き方改革をより一層進める必要があります。本市においては、これまで統合型校務支援システムの導入等による業務のICT化を始め、教員支援員やスクール・サポート・スタッフ、部活動指導員等の外部人材による教職員の業務負担を軽減する支援を行ってまいりました。また、令和6年度より、教職員の繁忙時期である各学期始めと終わりにおいて、新たに短縮日課とする期間を設けるなどの取組を開始し、学校現場からは高評価を得ていることから、取組を継続してまいります。さらに、これらの働き方改革については、関係機関との連携の下、保護者や地域へのより一層の理解と協力を求めるとともに、教職員一人一人が子どもと向き合うことにやりがいや幸せを感じられるよう、ニーズに応じた研修の充実や人的支援の拡充に努めてまいります。
部活動については、休日における部活動の地域連携・地域展開等を見据え、部活動指導員を拡充するとともに、外部指導者、地域ボランティア等の地域の指導者に御協力いただいた指導や地域のスポーツ・文化芸術団体等と連携した活動を行うなど、子どもたちの活動を保障し、教職員の負担軽減につながるよう取組を進めています。子どもたちが地域の中で、継続的にスポーツや文化芸術活動を行うには、種目ごとの競技人口や指導者、場所の確保等の課題が明確になってきたことから、令和7年度は、休日の部活動を各学校単位ではなく、拠点で行うための体制づくりを行い、令和8年度夏以降、競技人口等に応じて地域に部活動の拠点を置いて活動するなどの改革を進めてまいります。
小中学校の適正規模・適正配置につきましては、児童生徒の教育条件の改善の観点を中心に据えて、子どもや保護者、地域等の意見を尊重しながら進めており、とりわけ、白山地域の小学校の在り方については、令和6年4月に「白山地域小学校の在り方検討委員会」を設置し、統合に向けて進めていくことが、当該委員会において確認されました。今後、具体的な方向性等について当該委員会において協議を進め、子どもたちの充実した学びが保障されるよう取り組んでまいります。
教員不足の課題については、教員養成系大学で学ぶ学生に、教員という職業が選択されるよう、引き続き、近隣大学と連携し、学校現場において、教員をサポートする体験等を行う取組を導入するなど、将来を担う子どもたちを育むことの尊さや教員という仕事の魅力等を感じることができる機会を積極的に創出してまいります。また、少しでも多くの方が学校で働くことに興味・関心が持てるよう相談会を実施するなど、引き続き人材確保に努めてまいります。
学校施設は将来を担う子どもたちの学習・生活の場です。子どもたちが安全で快適に学ぶための施設整備を進めていくことが、学校教育の充実につながることから、機能維持やバリアフリーへの対応等を図るための長寿命化改修事業に継続的に取り組み、令和7年度は、栗真小学校、豊が丘小学校、桃園小学校、千里ヶ丘小学校、東観中学校の5校の工事を実施するとともに、南立誠小学校、立成小学校の2校の設計を行います。また、支援を必要とする生徒や介助者の負担が軽減されるよう、西郊中学校にエレベーターを設置します。
さらに、ボートレース事業の収益金の一部を積み立てた津市学校施設整備基金を有効に活用し、小学校5校及び中学校2校の防水改修工事を実施するなど、引き続き、子どもたちの安全で快適な学習環境の充実を図ってまいります。
学校給食については、地場産物を活用した献立により、学校給食を「生きた教材」として食育の推進を図りながら、安全安心な給食を安定的に提供するとともに、物価が高騰している中でも、給食費の値上げを保護者に求めることのないよう、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、支援を継続していきます。
また、一志学校給食センターの長寿命化改修工事(第【2】期工事)を実施するなど、施設の適正な維持管理に努めます。
放課後児童クラブについては、利用児童が増加しており、近年、民設民営クラブの開設実績が増えている状況等も考慮しながら、引き続き狭あい化している施設を中心とした施設整備を計画的に進めてまいります。
令和7年度は、修成地区放課後児童クラブの新築2階建て移転整備を行うとともに、高茶屋地区放課後児童クラブの2棟目として新築2階建てを整備します。安濃放課後児童クラブについては、狭あい化解消のため、同小学校校舎内へ移転・改修整備するための実施設計を行い、児童の放課後等の安全安心な居場所を確保します。
また、放課後児童クラブの運営に関しましては、引き続き、支援員確保のための支援を行うなど、クラブの充実に向けた取組を進めてまいります。
公民館については、人づくりや地域づくりにつながるような学習活動を進める中で、地域社会の担い手となるような人材の育成を進めるとともに、幅広い世代に対応した講座の充実を進めるなど、魅力ある公民館運営を進めてまいります。
また、高茶屋地区の公共施設の再編に伴い、高茶屋保育園跡地を活用した南郊公民館等複合施設の整備工事に着手するとともに、施設の老朽化に伴った修繕等による適正な維持管理に努め、利用者が安全で快適に学べる環境づくりに取り組んでまいります。
図書館については、居場所としての図書館や若い世代が気軽に来られる図書館についても研究を深め、利用環境の充実に努めています。令和7年1月に児童コーナーへ小型テントを設置するなど、児童が楽しく快適に過ごせる空間を作りました。今後も、乳幼児から大人まで様々な年代に読書の大切さを伝えるとともに、学校やボランティア団体との連携により、子どもたち、特に読書離れが進む中学生・高校生世代に対して、興味や関心を持ってもらえるような資料の提供などを通じて、読書活動を推進してまいります。
利用者サービスの根幹である図書館情報システムについては、令和7年12月に更新を予定しており、ホームページをリニューアルするほか、Web上に本棚を再現して新たな本との出会いの場を提供します。
文化財については、令和6年12月3日に新たに国の登録有形文化財(建造物)として、全国的にも希少な鉄道遺産と評価される「旧国鉄名松線伊勢奥津駅給水塔」が登録されました。先人の足跡を示す貴重な歴史遺産につきましては、指定文化財や登録文化財として保護を進めるとともに、その修理や伝統文化継承への支援を行い、市内に残る様々な文化財の保存と活用を図ります。
県指定史跡である津城跡については、令和5年度から庁内の横断的な連携を図るために関連部局からなる津城跡(お城公園)整備調整会議において整備の方向性を探る協議・検討を継続してまいりました。令和7年度は、お城公園内の旧社会福祉センターが解体撤去されて本丸南側への視界が大きく広がることから、こうした点も踏まえて調整会議において検討を重ねながら、今後の津城跡の整備・活用の方向性を示します。
また、市民が地域の歴史と文化に触れる場として、市内の資料館を始め市の公共施設を活用した文化財や収蔵資料の展示公開を継続するとともに、合併以降の広報津「歴史散歩」の登載記事(第1回~200回)を一冊の総集編としてまとめて刊行し、より身近に郷土の歴史に触れていただくための情報提供に努めます。
以上、令和7年度の教育方針について申し述べました。
国の合計特殊出生率は過去最低を更新し、少子化・人口減少が一層進む中、「こどもまんなか社会」の実現に向けた取組が動き始めています。これからの時代を生きる子どもたちの個性や多様性が尊重され、一人一人の自己肯定感や自己有用感が育まれ、全ての子どもたちの可能性を最大限に伸ばしていく教育につなげられるよう、総合教育会議における議論を大切にしつつ、学校現場や保護者、地域の皆様の声をしっかりお聞きするとともに、国の施策にも注視しながら、柔軟かつ着実に教育行政を推進してまいります。
市民の皆様、議員の皆様の御支援と御協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。