登録日:2021年11月1日
~東京事務所長です~
小津安二郎。言わずと知れた日本を代表する映画監督です。
東京・深川で生まれた小津監督は、9歳からの10年間、父の郷里である三重県松阪市で過ごし、宮前尋常小学校の代用教員として勤務したことはファンの間ではよく知られていますが、津市にもゆかりのある方なのは皆さんご存知でしょうか。
小津監督の母方のおばあさまは津市美杉町の名家の出身で、津の伊勢商人御三家に数えられた宿屋町(現・津市東丸之内)の中條家へ嫁ぎました。
小津監督の日記には、おばあさまの家を何度か訪れ、当時津にあった「新世界」や「大正館」という映画館をハシゴしたことなどが書かれています。
昭和2(1927)年には、久居の陸軍第33連隊に短期入隊した小津監督が、久居に向かう朝の、おばあさまとのやり取りと軽便鉄道の窓から見た彼岸花の話を、句を添えて友人に送っています。
「おいなされ 又このつぎに 彼岸草」
映画評論家の佐藤忠男氏は、著書『小津安二郎の芸術』の中で、小津監督の代表作『彼岸花』という言葉が、「こんな遠い記憶に根ざしたものである」と書かれています。
津を走る軽便鉄道の車窓から見た風景が名作の題名につながったのですね。
秋の夜長、下町の人情や家族の日常を丁寧に描いた小津監督の作品に触れるのもいいですね。
現在、小津監督が若かりしときに訪れた津市の映画館「大正館」があった津市大門の津観音の境内には小津安二郎記念碑が有志によって建立されています。
また、小津監督の故郷、江東区には小津安二郎誕生の地の碑と江東区古石場文化センターに「小津安二郎紹介展示コーナー」があります。
どちらも、お近くにお越しの際にはお立ち寄りください。
「小津安二郎紹介展示コーナー」(江東区)
許可を得て撮らせていただきました