施政方針(平成24年3月/平成24年第1回津市議会定例会)

登録日:2016年4月3日

 平成24年第1回市議会定例会の開催に当たり、平成24年度の市政運営に臨む私の所信の一端を申し述べ、皆様の御理解と御協力をお願いいたしたいと思います。
 昨年4月、市民の皆様の負託を受け、津市政の舵取りを任されてから、10カ月を数えました。この間、議員各位をはじめ市民の皆様から鼓舞激励をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
 同時に、市民の皆様の熱い想いに触れた10カ月でもありました。城下町、街道筋の歴史により育まれてきた文化・コミュニティを有する都市として、そして、明治22年に全国で最初に市制が施行された都市の一つとして、多くの市民は、高い自治意識と歴史への誇りをお持ちであります。市民の皆様が、この地にふさわしい堂々たる市政の推進を期待しておられることに応え、風格のある県都津市を創造していく決意を新たにいたしました。

 一方で今、私たちがいる現実は、時代の変遷の渦中にあります。例えば、東日本大震災、福島原発事故からの復興と、巨大災害に動じることのない安全対策の実行、持続可能な社会保障制度の実現は、従来の延長線上では解決することができない、正に、時代の流れの中で新たに築いていかなければならない制度や仕組みであります。制度設計については、国において主体的に取り組まれるものではありますが、これらは、市民の皆様の日々の生活に直結する大きな課題であります。
 したがいまして、基礎的自治体におきましては、今、市民が真に求めておられるものは何か、そして、私たちにできることは何か、絶えず考えながら、地に足をつけた市政を進めていかなければなりませんし、それが未来を担う次世代に対する私どもの責任であると考えます。
 そのためには、市民主導の市政を推進すること、そして、将来を見据えたまちづくりを一歩ずつ着実に推進することが大切であります。

 まず、市民主導の市政の推進であります。
 昨年7月、津波避難ビルの指定を行いました。この施策を実現に導いたのは、自治会長さんのアイデアからでございました。また、津市ホームページにおいて、それぞれの地域情報を充実したものにできましたのも、昨年から実施しております市政懇談会に御参加いただいた方々との対話から生まれたものでございました。
 これらは一例でありますが、市政の推進に当たっては、市民と対峙するのではなく、市民と同じ方向を向いて、お互いの役割分担のもとで、努力を積み重ねること、それが、私の姿勢でありますし、「対話と連携」の実践であります。地域で御活躍されてみえる方々との懇談会は、引き続き実施してまいりますし、懇談会の内容については、津市のウェブサイトで公表してまいりますが、市長の動きのみではなく、津市役所全体が、市民から寄せられる御意見や御提言に対し、出来ることから順に、迅速に対応し、形にしていくことが求められています。このため、新年度から新たに市民部市民交流課に対話連携推進室を設置し、職員一丸となって、市政の課題に係る市民の声を的確に把握し、各種施策として着実に実現するよう努めてまいります。
 次に、将来を見据えたまちづくりである、総合計画の着実な推進であります。
 屋内総合スポーツ施設の整備、新最終処分場の建設、新斎場の整備など、計画に位置付けられたプロジェクトについては、将来にわたって必要となる都市施設として、途切れることなく整備を進めてまいります。また、JR名松線の全線復旧に向けた取組、防災対策の強化、児童・高齢者福祉対策、有害鳥獣対策など、市民生活に係る喫緊の課題については、本市の重点施策として取組を行ってまいります。そのほか、基本計画に掲げられた施策について、総合計画後期基本計画において、今後の進め方を明らかにし、平成25年度からの5年間に着実に実施に移せるよう努めてまいります。
 地方自治体を取巻く環境も時代の変遷とともに変わってまいります。先行きが見通せない不透明な状況であるからこそ、市民主導の市政を、「ぶれず、浮かれず、堅実に、そして、立ち止まることなく」推進し、まちづくりを着実に進めてまいる決意です。
 以上、平成24年度に向けた私の市政に取り組む姿勢について申し述べました。皆様の一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 それでは、新年度における重点施策の概要について、所信表明で申し上げました「市民の命を守る」「市民の心をつなぐ」「市民のくらしを創る」の3つの柱に沿って御説明申し上げます。
 1つ目は、「命を守る」取組です。
 まず、津市の最優先の課題であります防災対策の更なる強化です。
 伊勢湾沿いの低地に市街地を形成している津市にとりましては、震災による津波対策は緊急の課題であり、東日本大震災の津波の映像を目の当たりにした市民の不安は非常に大きいものと感じています。
 国の直轄事業である海岸整備事業につきましては、今年度内に贄崎工区が完了いたします。栗真町屋工区、阿漕浦・御殿場工区につきましては、今年度から設計業務など事業に着手していただいており、設計完了後、順次、工事を進めていただくこととなります。
 また、津波避難ビルにつきましては、12棟の指定を行うとともに、県下で最初となる津市地域防災計画津波対策編の策定などを行ってまいりました。これを基に、自治会や自主防災組織において、住民の方々がどこへ、どのように避難するのか、具体的な検討が進んでおります。津市においては、「津波避難先一覧」の取りまとめ作業を進めており、さらに、平成24年度、25年度を「災害対応力強化集中年間」と定め、地域における災害対応力の強化を図ります。併せて、地震や風水害への対応も含め、津市地域防災計画の徹底見直しを行います。
 このため、平成24年度に新たに、自主防災組織の活動を支援するための自主防災活動活性化事業、地域における津波避難計画の作成支援、避難所標識への海抜表示や避難誘導表示の整備、孤立対策用災害備蓄品配備事業などを実施するほか、移動系の防災情報通信システムの整備を行います。さらに、香良洲地域の香海中学校の屋内運動場屋上を一時避難先として活用するため、外付階段やフェンスを設置いたします。従来、防災対策は、災害で判明した課題を一つひとつ確認し、その検証を進めながら、段階的に対策を行ってきたことと思います。それも大切なことではありますが、私は、悠長に構えることはいたしませんし、待ちの姿勢でもありません。不測の事態から市民の皆様の命を守るため、今、出来得る限りのことを全力で進めていくことが、危機管理の要諦であると思っています。4月から、危機管理部危機管理課及び防災室に、以上申し上げた対策を進めるため、2年間限定で特命担当を配置し、人員体制の充実を図り、これまでとは一味違う津市の防災を作り上げていきたいと考えております。
 併せて、消防力の強化を図ります。
 次に、救急医療対策です。
 昨年10月に開設いたしました津市救急・健康相談ダイヤル24は、多くの方に御利用いただいています。これは、市民の皆様に救急車の役割を御理解いただき、二次救急病院への軽症患者の混在を改善し、重症患者の方を迅速に搬送することなどを目的に開設したものでございます。今後、取組効果の検証に努めてまいりますが、決して、これだけで解決する問題ではありません。新年度から、新たに、三重大学への地域医療、総合診療体制の教育・研究に対する支援を通じ、県立一志病院における初期救急医療体制の充実に努めます。さらに、二次救急医療体制の在り方については、引き続き、医療関係者等との協議を行う中で、検討してまいります。

 2つ目の、「心をつなぐ」取組についてであります。
 まず、地域振興を進めるための仕組みづくりです。
 「総合支所は地域の代弁者であるべき」という考え方を推し進めるため、新年度から、政策財務部政策課の地域振興室を地域政策課に改め、同課が、各総合支所とともに、地域住民の立場に立ち、当該地域に求められる施策の実現に向け、本庁各部に働きかけを行うことといたします。
 これとともに、総合支所庁舎につきましては、今年度、香良洲庁舎の耐震及び改修工事が完了するとともに、一志庁舎の改築工事を進めています。新年度には、美杉庁舎新築に係る設計業務の実施、河芸庁舎の改修、久居庁舎の改築など、安全で地域の皆様に親しんでいただける施設へと順次、整備を進めます。
 次に、高齢者福祉につきましては、介護老人福祉施設の入所待機者の削減に努めるため、第6次高齢者福祉計画・第5期介護保険事業計画に基づき、介護老人福祉施設の整備や特定施設入居者生活介護の実施が推進されるよう努めてまいります。また、地域において、高齢者の見守りなどを行う生活・介護支援サポーターの養成については、今年度、約350人の修了者を見込んでおります。新年度についても、約200人の養成を目途に取り組むとともに、サポーターの方々が活動しやすい仕組みづくりを整えてまいります。また、肺炎及び肺炎による重症化を予防するため、新たに、65歳以上の高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンの接種費用の一部助成を行います。
 障がい児福祉につきましては、法改正により、4月1日から、障がい児の放課後等デイサービス及び児童発達支援が実施されます。これらサービスの適正な支給と併せ、夏休み期間中の障がい児の受入について、日中一時支援事業の充実に努めます。

 最後に、「くらしを創る」取組であります。
 まず、4つの重点プロジェクトについてであります。屋内総合スポーツ施設については、用地測量や土地収用を進め、新斎場については、PFI手法に基づき実施事業者の募集、選定を行います。また、新最終処分場については、環境影響評価及び実施設計並びにリサイクルセンターに係る実施設計等に取り組みます。JR名松線の全線復旧については、三重県、JR東海との連携のもと、調査、設計並びに一部工事を実施します。
 交通ネットワークの整備につきましては、先月5日に、中勢バイパスの松阪地内から国道165号までの区間が開通しました。国道306号から県道三行上野線までの区間もまもなく開通の見込みです。引き続き、未供用区間の整備を要望するほか、国・県道を含めた体系的な道路連携軸の形成を図ってまいります。
 地域経済の活性化を担うための企業誘致の推進につきましては、市長就任以来、5社、約20haの企業立地が決定いたしました。これらによる総投資額は約220億円にのぼり、約285人の新たな雇用が予定されるなど、地域経済に大きな活力をもたらす成果を生みつつあります。トップセールス、関東・関西・中京三圏での産業人交流会議、分譲用地PR説明会、さらに、業界紙等へのPR広告の掲載など、あらゆる機会を通じまして、積極果敢な企業誘致活動を展開してまいります。
 被害が深刻化しております有害鳥獣対策につきましては、喫緊の課題として、1月に設置いたしました広域獣害対策連絡協議会を通じ、各協議会の連携した取組を推進するとともに、特に被害額が増加しておりますイノシシにつきましては、捕獲単価を設定し、個体数調整を促進します。このほか、ドロップネットなどの先進的技術の実証実験にも取り組みます。
 次に、老朽化が著しく、早急な耐震化が必要な津市中央公民館、津市社会福祉センターにつきましては、中心市街地での賑わいの創出、既存施設の利活用による財政負担の軽減等の効果も踏まえ、津センターパレスの一部を区分所有する形で整備を進めます。このことにより、株式会社津センターパレスの経営改善にも資することになると考えております。
 一方、経営改革が迫られ、言わば、轍鮒(てっぷ)の急であるポルタひさいにつきましては、市といたしましても、あらゆる角度から、今後の対策について検討を進めます。
 次に、中心市街地活性化に向け、市民との意見交換を通じた協議の場を設定し、皆で街の賑わいを創りだすことを考えてまいります。
 また、香良洲地域において伝承され、20年に一度開催されます市の無形文化財である「お木(き)曳(ひき)行事」につきましては、平成25年3月の開催に向け、観光PR事業などを通じた支援を行います。
 次に、子育て環境、教育環境の整備です。
 子育ての推進につきましては、保育所待機児童の削減を図るため、民間保育所の整備が推進されるよう努めてまいります。また、子ども医療費助成につきましては、現在、小学校1年生から中学校3年生までの入院費を助成しているところでありますが、本年7月1日から、県制度に先がけ、小学校6年生までの子どもを対象とした通院費の助成を開始いたします。
 教育環境の整備につきましては、これまで実施してまいりました小中学校の耐震改修が今年度末で全て完了いたします。今後は、児童・生徒数の推移も考慮し、老朽化した施設の計画的な改修を検討してまいります。新年度におきまして、11億円程度の予算を確保し、まずは、白塚小学校及び神戸小学校並びに一身田中学校の大規模改修工事に着手します。
 また、美杉小学校の裏山で発生した段差につきましては、児童はもとより、地域の方々に、御不便をおかけしております。児童の安全確保を最優先に、引き続き、三重県に対しまして早期の工事着工をお願いしてまいります。
 幼保一元化につきましては、保育所、幼稚園といった枠組みに捉われず、保護者のニーズに対応した取組が行えるよう、保護者の皆様をはじめ、関係者の方々との意見交換会をスタートさせてまいります。
 以上、新年度の重点施策の概要を申し述べましたが、このほか、福祉、環境、文化、健康づくりなど、市民生活や市民活動を支えるための諸施策を着実に進めてまいります。

 続きまして、平成24年度の財政運営の基本的な考え方について、御説明申し上げます。
 平成24年度の予算編成は、津市としての行政課題に的確に対応する予算、公約に掲げました政策課題の実現に向けた予算、将来にわたる健全な財政運営を踏まえた予算という3つの視点で編成し、一般会計の規模は、平成23年度の実質的な予算規模となりました6月補正後の額と比べまして、約0.6%の減である約1千2億円といたしました。
 これは、義務的経費である人件費が前年度比で約2.6%の減、公債費が約5.5%の減、子ども手当が子どものための手当制度に改正されることにより約23.4%の減となりましたが、防災対策や救急医療対策、高齢者福祉や障がい者福祉への対応、子育ての推進や教育環境の整備、さらに、重点プロジェクトである新最終処分場の建設など、早急に取り組むべき施策の推進を図るため、総額として、若干の減少に留めた予算となったものです。
 特に、事業の緊急度、優先度を踏まえた事業選択を行い、必要な事業へ重点配分する「メリハリを付けた予算」とし、投資的経費については、平成23年6月補正後の予算額と比べまして、約2.3%増の約106億円を確保するなど、将来の市民生活を支えるための基盤整備を着実に進めていく実務型予算といたしました。
 一方、財政の健全化という視点では、まず、市債につきましては、臨時財政対策債を除いた平成23年度末の借入残高は約539億円で、平成22年度末と比較いたしまして
約53億円減少しており、借入残高を着実に減らしてきております。新規の起債借入につきましても、元利償還金の7割が地方交付税に算入される合併特例債などの有利な起債の活用に努めています。
 また、財政調整基金については、効率的な予算執行に努める中で、平成23年度末の残高は、約149億円という平成22年度末と同様の高水準を維持するなど、健全な財政
運営に努めてきております。

 続いて、行財政改革の取組についてであります。
 まず、津市行財政改革大綱に位置付けられました正規職員2千500人体制の早期実現に向けた対応です。これは、市町村合併後の定員管理の適正化の中で掲げられ、市民の皆様に約束したことであり、人件費縮減の方向性の中で避けては通れない課題でもあります。また、効率化された市役所としてスタートするための一つの到達点でもあります。4月には、約2千570人となりますが、市民の意向を踏まえた政策実現ができるよう、限られた人的資源を最大限に活用してまいります。
 そのためには、職員の意識改革、組織風土改革が不可欠です。
 昨年の競売入札妨害及び贈収賄事件への対応といたしまして、先月、再発防止策を取りまとめたところです。情報共有の徹底、信頼関係を基盤としたコミュニケーションの充実、小規模な執務場所の移転や集約、そして、服務規律の確保と法令遵守の徹底の4つの観点から再発防止に取り組み、実施状況を検証しながら、改善し、継続的な取組としてまいります。やはり、組織に根ざしたこれまでの風土を改革しなければ、市民に信頼される津市役所には成りえません。職員一人ひとりが、このことを認識し、組織の風土改革を強力に推し進めてまいります。
 

 以上、平成24年度の市政運営に臨む基本的な考え方と重点施策の概要を申し述べてまいりました。津市の経営を託された者として、しっかりとした市政の推進に努め、伝統ある県都としての価値を高めてまいる所存です。
 伝統ある県都としての価値、それは、
 城下町、街道筋の町として培われてきた歴史への想い、
 県内の経済、教育、文化の拠点として発展してきた誇り、
 住み良い都市と感じていただける市民の皆様の心、
これらは、時代が移り変わろうとも、変えてはならない価値であります。
 私どもは、その価値を守り、一つひとつの施策を確実にこなし、未来へ引き継ぐ新しい価値、「風格のある県都」の創造に全力を尽くしてまいります。
 皆様の温かい御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

市長の部屋

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