「広報津」平成23年6月1日/第131号(音声読み上げ) 歴史散歩(61)

登録日:2016年2月25日

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裏表紙

歴史散歩(61)

津綟子[つもじ]

 雨気を含んだ風が吹き始めるこの季節、制服も夏服に変わり、街が一気に夏めいてきました。
 今も夏服には、通気性に優れた麻織物がよく使われますが、かつて津には「つもじ」と呼ばれる名産の麻織物がありました。
 「もじ」とは、からみ織りという特殊な技法を用いて織られた織物です。原料には主としてカラムシや麻が用いられ、2本のたて糸でよこ糸を挟み、もじる(ねじる)ようにして織り上げるため、織り目が細かい網目状になるところに大きな特徴があります。吸湿性が良く、夏物衣料に適した素材であることから、肩衣やはかま、法衣、蚊帳などに用いられてきました。現在もこの技法を用いて、レースのカーテンや網などが生産されています。
 もじの中でも、江戸時代から明治時代にかけて、現在の安濃町清水・安濃・内多・太田などで生産されていた物は、織り方が精巧で織り目が崩れにくい上に、着心地も良く、「つもじ」と呼ばれて広く全国に知られていました。
 また、史料によるとつもじの品質には「上もじ・中もじ・下もじ」があり、特に最上級品は、津藩の「御用もじ」として、藩から幕府への献上品や諸大名への進物品とされました。そのため、藩からは、つもじの品質を管理するために、保護策や禁令が出されました。
 しかし、江戸時代の末ごろには藩の御用が減少し始め、明治時代になると、綿織物・綿糸を中心とした近代化された繊維産業に押されて、つもじの生産は衰退の一途をたどります。それでも、昭和初期までは、つもじを扱う業者がわずかに残っていたようですが、その後、生産が途絶えてしまいます。
 長い間、幻と呼ばれてきたつもじ。現存する数少ない資料の一つが、現在、安濃郷土資料館に展示されています。この黒羽織は、ほどかれた状態で発見され、布地に残る仕立てあとを丹念にたどって復元した物です。この生地が江戸時代の物か、明治時代以降の物かは分かっていませんが、黒染めの細かい網目は向こうが透けて見え、かつての粋な着姿が想像されます。

注:安濃郷土資料館の休館日は木曜日(木曜日が祝日、休日の場合はその翌日)と年末年始


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