「広報津」平成27年3月1日/第221号(音声読み上げ) 第20回 市長対談-災害に強いまちづくりを目指して-

登録日:2016年2月25日

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第20回 市長対談-災害に強いまちづくりを目指して-

 平成26年11月22日、宮城県亘理[わたり]郡山元町の齋藤俊夫町長を訪問し、東日本大震災発生からこれまでの復興状況などについて、前葉泰幸市長がお話を伺いました。

市長 齋藤町長と私とは宮城県庁勤務時代からの旧知の関係です。市長就任直後の平成23年6月に山元町を訪問、震災被害の大きさを目の当たりにして同年10月から職員の応援を始め、これまで延べ16人を派遣してきました。三重県からは津市を含め現在10人が被災地で応援職員として働いていますが、復旧復興のためには、継続して多くの人手が必要だと思います。現在の状況はいかがですか。

齋藤 前葉市長には、震災直後にいち早く山元町にお越しいただき、たくさんの激励を頂戴するとともに、津市職員を派遣していただき大変感謝しています。震災前の山元町の一般会計予算の規模は約50億円でしたが、震災後の平成24年度は約13倍、25年度は約10倍に増大しました。しかし、これだけの復興事業をこなすマンパワーの数は圧倒的に少なく、大変なミスマッチの状態となっています。
 震災から3年8カ月が経った今も、仮設住宅で不自由な生活を強いられている方々が1,000世帯、約3,000人もおられ、町の復興再生に向けた事業が山積している状況にあります。山元町職員181人に対し、宮城県内や津市をはじめとする全国各地から、平成26年9月現在で116人もの皆さんに応援職員として山元町で勤務いただき、おかげさまで県内の被災地よりも比較的に早く復旧復興に取り組むことができていると大変感謝しています。

市長 齋藤町長の下、山元町の職員と全国各地からの派遣職員がチーム山元となって頑張っておられるわけですね。津市も当初は土木と建築の専門職員を派遣していました。現在も全国から建築の専門職員の派遣は行われているのですか。

齋藤 山元町には建築の専門職員が1人もおりませんでしたので、津市からの職員派遣は非常に助かりました。まだまだ復興事業は山積しており、土木、建築職はもちろんのこと、復興事業に振り分けた結果、従来事務を担当する職員まで不足するなど、職員の不足は非常に厳しい状況にあります。

市長 復興はまだまだ道半ばということですね。山元町では、東日本大震災で町域の3分の1が浸水し、誠に残念ながら635人の町民の皆さんが尊い命を落とされました。

齋藤 主な原因はやはり津波でした。今回の経験を通じて、「津波が来たらすぐに逃げる」という津波文化を定着させることが、沿岸部を抱えた自治体の大きな課題だと思いました。また、海岸線に近いところにある保育所や支所、学校については、現場の責任者が初動の判断をしっかりできる権限の分担をおこなっておくことが大事だと思います。

市長 常に現場でベストが尽くせるよう、あらかじめ責任者に権限を与え、事前に訓練をおこなっておくことが非常に重要だということですね。自衛隊派遣など、災害の応急対策は被災直後から始まるわけですが、齋藤町長は宮城県庁勤務時代から自衛隊と顔の見える関係をつくられており、そのような意味では初動のところでうまく自衛隊との連携が取れたのではないかと拝察しております。

齋藤 今回の大震災ではこれまでの経験を生かし、自衛隊との良好な関係の中、応急対策、応急復旧を進めることができたと思っています。

市長 発災当日、被災した役場の前にテントを建てて臨時役場を開設、その隣に自衛隊のテントが建ち、2つのテント間で情報交換しながら初動を進められたと伺いました。自衛隊との顔の見える関係が発災直後に機能したということですね。

齋藤 いかなる災害に遭遇しても、初動の72時間が極めて人命救助では大切です。そのような意味では、頼みの綱である自衛隊を先頭とした防災関係機関との機能分担は、普段からの関係の中でいざというときに機動的な対応ができるようにしておくことが肝要だと思います。

市長 その後、応急対策、復旧復興へと進むわけですが、今日は、震災から3年半余りが経過したところでの復興現場にご案内いただきました。津波の爪痕がそのまま残る中浜小学校の様子には胸が痛みましたが、小学校に避難された近隣の方々と児童たちが教員の機敏な判断で校舎の屋根裏部屋に逃げ込み全員助かったというお話には心打たれました。

齋藤 山元町には、海岸線に近いところに2つの小学校があります。2階建て校舎の天井まで津波が来た中浜小学校では現地にとどまりながらも屋上の屋根裏部屋に逃れ、もう1つの小学校ではいち早く役場に避難し、幸いなことに2つの小学校とも人命に影響はありませんでした。やはり海岸線に近い学校をはじめとする公共施設については、普段から盛り土を一定程度考えるとか、屋根裏部屋の活用を考えるなどといった工夫がいざというときに生きるのではないかと痛感しました。

市長 この中浜小学校は、現状のまま震災遺構として保存していく計画だと伺いました。小学校から少し南にある磯浜漁港では、復旧事業が進む様子と、防潮堤の工事を見せていただきました。震災前とは少し違う形でより強くなる堤防を造っておられますね。

齋藤 震災前は、縦割り行政の関係で農地海岸と建設海岸の高さが1メートルほど違ったのですが、今回は建設海岸の7.2メートルに合わせていただきました。急勾配の防潮堤が津波の被害を受けたことから、今回は傾斜を緩くし、安定感のある粘り強い防潮堤に造り替えてもらっています。

市長 底辺が35メートルもあると伺いましたが、そのなだらかな形が地震に強く、津波の力を受け流して壊れないということですね。

齋藤 そういうことです。

市長 被災したJR常磐線を内陸部へ移設することに伴い、駅の場所も変更されることから、その駅前を中心とした新しい市街地づくりが行われている新山下駅周辺地区も見学させていただきました。新たな市街地の整備が行われるとなると、これまで別々の場所に住まわれていた方々がある一角にお住まいになることについては住民の皆様のご理解が必要になってきますね。

齋藤 今まで町は、分散・拡散型の地域構造になっていました。今後1カ所なり数カ所の新市街地に入っていただくことになりますと、住民の皆様のまちづくりに対するご理解がとても重要です。
 山元町では「今回の大きなピンチをまちづくりのチャンスにしたい」、また、「これからの人口減少を見据えた場合、コンパクトシティの理念を取り入れたまちづくりをおこなっていかなければならない」との思いで取り組んでいます。いずれにしても、新市街地を整備する中で、1日も早く震災前以上のにぎわいを取り戻していきたいと思っています。

市長 コンパクトシティとなりますと、例えばイチゴ農家の方は生産の集約化に伴い、ハウスの造成地と自宅になる場所が離れることになるわけで、権利の変換、あるいは用地買収や分譲が行われることになります。山元町では事前に地籍調査が進んでいたが故に迅速に事業が進んでいると伺いました。その点についてお話しいただけますか。

齋藤 おっしゃるとおりで、公共事業などを手掛けるときは、用地取得がいかにスムーズにできるかが大きな前提になります。山元町では昭和50年代後半のかなり早い段階から地籍調査に入っており、震災時点で100パーセント終わっていました。一部に古い相続関係の整理などの問題はありましたが、面積での境界争いとか境界確認というものは一切なく、非常にスムーズに用地買収が進められたことが大きな要因となり、新市街地の整備が順調に進んでいます。

市長 現在、津市の地籍調査は2.67パーセントにとどまっています。このため平成27年度から10年間かけてしっかりと地籍調査を行うプロジェクトを立ち上げているところです。山元町の事例も踏まえ、しっかりと境界を確定しておくことが大事なことだと思います。
 さて、山元町では毎秋ふれあい産業祭が行われます。今年の産業祭には、津市から香良洲のメンバーをはじめ、津市民38人が参加し、復興支援ブースを出店するほか、マグロの解体ショーなどを披露することになっています。

齋藤 山元町ふれあい産業祭は、町の一大イベントで、前葉市長をはじめ、皆さんに復興支援ブースでご支援いただけるとのことで大変感謝しています。
 山元町のさらなる復興のために、津市をはじめ応援いただいている全国各地の自治体の皆さんと交流を図り、山元町民との絆を深めたいと考えています。

市長 山元町の復興は、これからさらに続きます。津市としても職員の派遣を来年以降も続け支援してまいります。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

齋藤 こちらこそ、ありがとうございました。

 

宮城県亘理郡山元町長 齋藤俊夫[さいとうとしお]さん

宮城県亘理郡山元町中浜生まれ。坂元小・中学校、仙台市立仙台高等学校を経て、東北学院大学経済学部卒業後、宮城県庁に入庁。スポーツ振興課長、大河原福祉事務所長、総務部危機管理監、産業経済部次長、仙台地方振興事務所長を歴任し、平成22年3月に定年退職。平成22年4月から山元町長(現在2期目)。

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